50年の歳月もその魅力を色あせさせることは出来ない不朽の名作『ベルサイユのばら』。
この記事からは文庫版5冊の1冊ごとにあらすじと『ベルサイユのばら』の魅力を解説していきます。
『ベルサイユのばら3』あらすじ
(1785年以降)
『黒い騎士』をおびき寄せることに成功したオスカルですが、罠に気付いた『黒い騎士』は鞭をふるい、アンドレは左目を負傷してしまいます。
おまけにロザリーを人質に取られ、落ち込むオスカルです。
オスカルはパレ・ロワイヤルにオルレアン公の様子を探りに出かけますが、案の定閉じ込められてしまいます。
アンドレは医師から「失明の危険があるので包帯を取らないように」言われていましたが、オスカルの危機を察知して再び黒い騎士に扮します。
そしてパレ・ロワイヤルでオスカルとロザリーを助け出します!
黒い騎士に復讐しようとするオスカルを、アンドレが制止します。
「武官はどんな時でも感情で行動するものじゃない!!」
「お前がわたしのアンドレにしたように」と口走るオスカルを止めるアンドレがカッコいいんだ!
ロザリーが撃った弾丸が当たり、『黒い騎士』はジャルジェ邸で手当てを受けます。
『黒い騎士』の正体は、新聞記者のベルナール・シャトレ。
ロザリーの母の事件で世話をしてくれた人でした。
ベルナールからロベスピエールについて聞いたオスカルは、急速に意識が変わっていきます。
ロザリーとベルナールが似合いだと考えたオスカルは、ベルナールをかばい、ロザリーと所帯を持たせます。
フェルゼンに失恋したオスカルに対し、アンドレは自分の恋心を打ち明けます。
次にオスカルがしたことは、近衛兵を辞職し、フランス衛兵隊部隊長に志願することです。
ジャルジェ将軍は怒りますが、結局アンドレに「衛兵隊に入隊してオスカルを守ってやってくれ」と頼むのでした。
平民が多く、女の隊長を拒否している衛兵隊ですが、オスカルは権力で統治しないことを決意しています。
剣の紛失事件でオスカルはアラン・ド・ソワソンと剣をかわしてみて、相当の使い手と知り、お互いを見直す結果になります。
しかし衛兵隊の隊員はいまだに女の下で働くことを良しとせず、暴行を加えようとします。
アンドレが助けに駆け付けて発砲し事なきを得ますが、この時もオスカルは処分をせず、彼ら一人一人の生活を理解しようとつとめます。
そして隊員たちの家族の苦しい生活を知るのです。
マリー・アントワネットはフェルゼンとつかの間の逢引きを続けていますが、ついに国王ルイ16世のもとに、王妃の振る舞いを非難し、次男ルイ・シャルルはフェルゼンの子であると書いた手紙が届きます。
王に対してきっぱりと否定するマリー・アントワネットですが、王太子は脊椎カリエスが悪化。
苦しい日々が続きます。
1788年、フランス政府は財政難に陥ります。
借金を増やし増税で乗り切ろうとする政府に民衆の不満は募っていきます。
ベルサイユで行われる閲兵式で、フランス衛兵隊のアラン率いる第1班がブイエ将軍に無礼を働き、将軍自ら営倉入りを命じられてしまいます。
パリの街全体に不穏な空気が漂い、ジャルジェ将軍はオスカルに結婚話を持ち出します。
求婚者は近衛兵のジェロ―デルです。
「いまさら女として生きろと言うのか」と怒ったオスカルは「自分の求婚者ための舞踏会」を盛大に催しますが、自身は華麗な軍服に身を包み、その場の女性たちを片っ端から魅了し、あげくの果てには衛兵隊の隊員たちに好きなだけ飲み食いさせるどんちゃん騒ぎの場にしてしまいます!
そしてジェロ―デルと語る中で、自分はアンドレを愛していることに気付くのです。
オスカルは父レニエ将軍に、自分が当たり前の女性として育っていたら姉たちと同じ人生を送っていたのかと問いただします。
父の「その通りだ」という返事を聞いたオスカルは、父にこれまでの人生の感謝を述べ、今後は一身を剣に捧げ、武官として、軍神マルスの子として生きることを誓うのです
アンドレは自分がオスカルに求婚できないことに苦しみ、いっそオスカルを殺して自分も死のうと考えてしまいます。
しかしまさにその瞬間、生きているオスカルを守り抜くことが自分の存在理由であると知り、事件は未遂に終わります。
翌日、パリ市内へ出向いたオスカルとアンドレの馬車が暴徒に襲われます。
この時、通りかかったフェルゼンが襲われている二人を逃すためにしたことは、暴徒に向かって名乗ることでした。
「我が名は ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン」
オスカルは暴徒の中にフェルゼンを残し、アンドレを救って逃げる自分自身の変化に考え込むのでした。
1788年11月19日、国の借金4億2千万リーブルをめぐって三部会を要求する声が上がります。
アンドレは左目だけでなく右目も見えなくなってきていますが、使用人の身では医者に見せることも出来ません。「同じ人間なのに…な」このアンドレの呟きこそ、時代の声なのです。
『ベルサイユのばら』の魅力/性別を超越して見せたオスカル
オスカルの父・レニエは、オスカルを嫁がせ、軍から身を引かせようとします。
娘の生命を第一に考えた親心ですね。
人間として生きる道を選んで見せる強さ
オスカルは父に、男として生き、広い世界を見られたことの感謝を述べ、フランス衛兵隊で多くの兵士と心をぶつけ合った結果、いまさら女としての幸せを望む気持ちはない、武官として一生を全うする、と告げるのです。
女性を引き付ける中性的魅力
父が『オスカルへの求婚者の舞踏会』を催したつもりが、オスカルはまばゆいばかりの士官として登場し、居合わせた女性たちの心を魅了して見せます。
オスカルのカッコよさ、優美さ、華やかさに加え、なんといってもこの小気味よさはどうでしょう!
間違いなくオスカル様最高のシーンの一つです。
『ベルサイユのばら』の魅力/身分違いの恋でも輝くアンドレ
アンドレはついにオスカルに自分の心を伝えます。
ともに成長してきたからこそ、アンドレは卑屈になることなく、まっすぐに心を開いて見せることができ、読者は心からそんなアンドレに感嘆するのです。
だからこそ、貴族の身分がないばかりに求婚する権利を持たず、他の男にオスカルが奪われるかと思うだけで、何倍も苦しむことになります。
「いっそオスカルをこの手にかけて、自分も…」そう考え、実行する寸前に気付くアンドレの言葉はつい何度も読み返してしまいます。
生きている…生きている…!
その姿こそが美しいのだと今くらい思ったことはない
生きた 血のかよった
心臓の脈動が聞こえる
バラ色の唇 黄金の髪 オリンポスの太陽のきらめきのぼる
守ってやる
まもってやる きっときっとこの命の尽きるまでアンドレ『ベルサイユのばら』3巻p.321
『ベルサイユのばら』の魅力/ルイ16世への共感
この巻で吐露されるルイ16世の心情を読むと、不器用だけれども誠実な男性であったルイ16世に一気に共感してしまいます。
1770年、フランス王太子妃として嫁いできたマリー・アントワネットのまばゆいほどの愛らしさ。
それに比較して自分は美男子でなく太っているし、ダンスは下手で気が弱く、しゃれた会話も出来ない。
「愛している」の一言を伝えることも出来ないままに、過ごしてしまった長い年月。
二人の王子も産んで、王妃としての義務は果たしてくれたのに
あなたが女としての幸福をもとめるのを どうして非難することができるだろうかルイ16世『ベルサイユのばら』3巻p.206
一般人であったなら、ただのいい人でいられたであろうルイ16世こそ、この時代の被害者であったかもしれません。
『ベルサイユのばら』の魅力・貧困にあえぐ庶民の代表・ロザリー
『黒い騎士』の正体を、母の死にあたって世話をしてくれた新聞記者のベルナール・シャトレと知ると、ロザリーはジャルジェ邸で親身に看病します。
徐々に心を通わせていくロザリーとベルナール。
ベルナールはロザリーに母のことを語り始めます。
平民の母は貴族の父に与えられた屋敷からある日突然に追い出され、セーヌ川に身を投げたのです。
ベルナールは生き延びましたが、母を亡くしたロザリーのことを忘れられなかったと語ります。
あれは1774年、ロザリー11歳の時だね
今は1785年だから、11年前のことかあ。
ロザリーは22歳なんだ、お年頃だね!
この二人の様子を見て、ベルナールをかばい、結婚させてやるオスカルはさすがの一言ですね。
ロザリー、今度こそ幸せになって!!
『ベルサイユのばら3』あらすじとその魅力の秘密4選
1785年から約3年間の時の流れの中で、オスカルは近衛兵からフランス衛兵隊へ。
庶民の暮らしを身近で感じ取ることになります。
この巻ではオスカルは女としての人生を捨て去り、軍人として生きることを誓います。
ロザリーは幸せをつかみ取ることができるのか?
失明寸前のアンドレの運命は?
さまざまな謎を残し、物語は4巻へと続きます。
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