ブラッド・ピット主演映画『ブレット・トレイン』は、伊坂幸太郎の原作小説『マリアビートル』からは大きく逸脱し、別物のような展開を見せていきます。
日本人の観客の視点から、個人的な感想を書いていきます。
鑑賞後の感想ですので【ネタバレ】の内容になりますのでご注意ください。
映画『ブレット・トレイン』のトンデモ日本はどうなの?
映画『ブレット・トレイン』で描かれる日本のイメージはポップでカラフル、いつの時代のものかわからない『日本風』に溢れています。
また、『パルプフィクション』『ブレードランナー』『マトリックス』といった映画や庵野秀明監督をはじめとするジャパニーズ・アニメへのオマージュも感じ取れます。
このテイストを「こんなんじゃないじゃん!」と思う方もいらっしゃるでしょう。
私はこの後のストーリー展開のための「これは虚構の世界だよ」と強調するための舞台作りと受け取りたいです。
アクションシーンもスリルや迫力よりコミカルさを選択しているように感じますので、スピーディーで次々繰り出される展開を大いに笑って楽しもうということかなと。
駅のホームのキオスクでは提燈が飾ってあったような…
細かいところにネタがちりばめてあるのを、いちいちツッコんであげたい気分です。
映画『ブレット・トレイン』の主役が日本人じゃなくてブラピってどうなの?
映画『ブレット・トレイン』の主役、ブラッド・ピットの何年たっても変わらない魅力には驚愕します。ブラピ58歳、年を取るのを忘れているのでしょうか?
ハリウッド映画だからこそ、ブラッド・ピット、真田広之はじめ豪華なキャスティングでド派手な演出が見られると思えば、もう原作とは「別物」と考えた方がよさそうです。
白人以外の役を白人が演じる『ホワイト・ウォッシュ』ではないかという声もありますね。
この映画では役柄自体が外国人に書き換えられているので、その批判を避ける手当てがされているのかもしれません。
原作の『七尾』とブラッド・ピットの演じた『レディバグ』は別人です。
七尾は本当に運が悪く、運が悪いせいでトラブルが舞い込んでしまいます。
本人はいたって消極的、オドオドとなくなったトランクを探し続けますが、レディバグはいつのまにか●し屋同士の抗争にどっぷりつかって行きます(笑)
私としては原作『マリアビートル』の丁寧な伏線回収が好きなので、映画のド派手な展開を残念に思う気持ちと、これはこれで面白いかなと思う気持ちと、半々です。
映画『ブレット・トレイン』の王子が日本人じゃなくてしかも女の子ってどうなの?
映画『ブレット・トレイン』に登場する『王子』の役は、優等生的な外見のカワイイ女の子に変わっています。
原作に登場する『悪魔的』な少年を木村の父がお仕置きする、という展開が大変気に入っていたので、正直最初はピンと来ないなあ…と感じていました。
王子に関する前置きの説明が省略されすぎて、何者なのかがわからないのでは?と。
しかし、映画では彼女はホワイト・デスの娘であり、目的は父であるホワイト・デスを●すことだったのですね。
それにしては木村を巻き込むやり方が大掛かりすぎるし、それによって木村の父が出てくるのも偶然過ぎてムリがあるかな?
彼女の扱いだけは、残念だったと言わざるを得ません。
『ブレット・トレイン』王子役は女の子!原作との違いを楽しめそう
映画『ブレット・トレイン』新幹線の中で日本刀ってどうなの?
真田広之演じるエルダーのカッコよさはハンパないです!
彼の武器は日本刀(笑)。
新幹線の中でも遠慮なく刀を抜くという描き方は、まさにハリウッド的。
アメリカン・コミックと思ってかっこよさだけを鑑賞しましょう。
原作ではさすがに刀は登場しませんので、これも『トンデモ日本』の現れと笑い飛ばしましょう!
映画『ブレット・トレイン』の新幹線が脱線するってどうなの?
あの映像を見て17年前のJR福知山線脱線事故を思い浮かべてしまったのは私だけでしょうか。
この展開があるからこそ、『架空の世界のお話』を強調する『トンデモ日本』を作り上げたのかもしれませんが、個人的にはやりすぎだと感じました。
新幹線の中のやりたい放題も現実的にはあり得ない話なので、面白いとは感じられませんでした。
映画『ブレット・トレイン』のタンジェリンとレモンはどうなの?
映画『ブレット・トレイン』のタンジェリンとレモンはイギリス人の白人・黒人のコンビ。
レモンが『きかんしゃトーマス』ファンなのも原作通りの設定です。
原作でもいい味出してるふたりですが、映画版はお互いへの愛情を感じられて、原作を超えた良さがありました。
レモンが死んだと思ってタンジェリンが自分のペンダントを首にかけてやるシーン、意識を取り戻したレモンがタンジェリンの死を知り悲しみにくれるシーンも印象的でした。
タンジェリンを演じたアーロン・テイラー=ジョンソンと、レモンを演じたブライアン・タイリー・ヘンリーはこの映画の共演が初めてだったそうですが、お互いに友情をはぐくみ、アドリブのセリフと演技が映画を良い方向へ導けたと語っています。
タンジェリンが走る新幹線に飛び乗る場面も爆笑ですし、レモンには最後には愛しさすら覚えてしまいました。
この二人組、近年まれに見るナイスなコンビではないでしょうか。
映画『ブレット・トレイン』日本人や日本の扱いはどうなのよ?【ネタバレ】
映画『ブレット・トレイン』鑑賞後、日本人や日本の扱いについて感じたのは、あえて現実とはかけ離れた『日本のイメージ』を取り入れることで、虚構であることを強調し自由な表現ができるようにしているということでした。
日本人としては不快に感じる部分を、虚構のノンストップ・アクション・コメディーと笑い飛ばすのがこの映画の楽しみ方でしょう。
原作を超えた良さを見せてくれた蜜柑と檸檬の好演に拍手を送りたいです。
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