『ブルージャイアント』あらすじネタバレ解説|映画と合わせて楽しめる

大『ブルージャイアント』1巻 ブルージャイアント

漫画『ブルージャイアント』(作:石塚真一)は2013年から2016年まで『ビッグコミック』に連載されたジャズを題材とした漫画です。

2023年にアニメ映画化されましたが、実写でもTVアニメでもなく、アニメ映画でというのは作者の石塚氏の思いがあったようです。

映画版のストーリーは漫画の東京編からスタートし、仙台編は回想の形で説明されます。

この作品を楽しむために、漫画『ブルージャイアント』のあらすじを単行本1巻ごとにご紹介していきます。

スポンサーリンク

漫画『ブルージャイアント』あらすじ

ブルージャイアント 1巻

宮本大は仙台の高校生。
中・高とバスケットを続けてきた大ですが、引退の時には体格や筋力に限界を感じます。
そんな大が自分の可能性を信じて打ち込んでいるもの、それがジャズ。

大は中3の時、ジャズを聴き始めた友人に誘われて、初めてジャズの生演奏を聴きに行きました。
その時ジャズの魅力に取りつかれ、独学でテナー・サックスを練習しているのです。

大『ブルージャイアント』1巻p.36

大『ブルージャイアント』1巻p.36

大の練習場は広瀬川の土手や道路のアンダーパス。
「オレは絶対に世界一のジャズプレーヤーになる。」と自分に言い聞かせながら、ジャズの音源をお手本に吹きまくります。

ジャズがスゲエ熱くてハゲしいから、だからジャズが好きなんだ

宮本大『ブルージャイアント』1巻

リードを購入するひろせ楽器の小熊店長に、大は「ボクはどうしたらジャズプレーヤーになれますか」と質問します。
小熊は大の音を聞いて、初めてのライブの店を紹介してくれます。

初めてのライブは「バード」という店でしたが、お客さんに「バカでかい音で迷惑」と怒られてしまいます。

ショックを受けた大は店長・川北が引きとめるのも聞かず、店を出ます。
しかし公園で涙を拭うと、大は力強くつぶやきます。「へでもねえや!」

大『ブルージャイアント』1巻

大『ブルージャイアント』1巻

大は父に高校卒業後の進路を聞かれて、「ジャズプレーヤーになりたい」と答えます。
父は即座に「やれよ。とことん、思い切りやれよ。」と背中を押してくれるのでした。

 ブルージャイアント2巻

大が中2の時に告白した水泳部の三輪さんは、祭りの夜に大の練習を見に来てくれました。

その夜、三輪さんと歩く大は、路上演奏者に文句を言う男に「ヘタクソでナニが悪いんすか」と言います。これがのちにサックスの師匠となる由井との出会いです。

バードの川北さんが「会わせたい人がいる」と、由井を紹介してくれます。
アメリカのバークリー音大でジャズを学び、一流を目指して来た由井ですが、今は自分の才能に限界を感じ、仙台で音楽教室を開いています。

由井は大の音を聞いて才能を感じ、楽譜も読めなかった大に、音の出し方、スケール理論などスパルタ教育を始めます。

三輪さんとのデートで定禅寺ジャズフェスティバルに出かけた大は、会場で自分の楽器を取り出し吹き始めます。
すぐさま警備員に止められますが、その音を聞きつけたのはレコード会社の五十貝でした。

回想で、兄が大にサックスをプレゼントするエピソードが語られます。
大が10歳、兄13の時、母が亡くなり、父と兄妹、4人の生活が始まりました。
高校を卒業し就職した兄が、2年半前に買ってくれたのが大のサックスなのです。

 ブルージャイアント3巻

由井がバークリー時代に目指していたのが『ブルージャイアント』。
仙台に演奏に来た学友とのエピソードが語られます。

兄からサックスをもらった後、運指表をくれた音楽の岡崎先生。
あれから2年半。
今年の文化祭は大と岡崎先生でジャズの演奏をします!

川原で出会った犬、バーナムに捧げる曲を書き、初めての作曲が完成しました。

大の父はレッスン代を払いに由井を訪ねますが、レッスン代は要らない、と断られます。
由井は大に期待していることを話し、また大には「10年後ポルシェ」と出世払いでよいことを伝えます。

大みそかの夜、雪の中サックスを吹く大の足元を一匹の猫がまっすぐに歩いていきます。

おまけマンガは上原ひろみさんです。

 ブルージャイアント4巻

由井は大をほかの人間とプレイさせるために「バード」に連れていきます。

大は川西に『あのオジサン』を呼んでほしいと頼み、ついにお客さんに届く演奏ができる自分に成長できたことを証明しました。

家族に「東京に行きたい」と打ち明け、閉店後のスーパーで初めて家族に演奏を聴かせます。
妹の彩香は「兄ちゃんはもう戻ってこないんだ」と涙を流すのでした。

卒業式も近づき、半年続いた由井のレッスンも終わりです。
由井は「お前はずっと、ずっとずっと、ジャズを好きでいろよ」という言葉を贈ります。

由井『ブルージャイアント』4巻

由井『ブルージャイアント』4巻

大、東京へ。
「数日置いてくれ」と突然玉田の家に転がり込みます。

大は墨田川大橋の下に練習場所をみつけ、すしざんまいでバイトを始め、さらに工事現場でバイトを始めますが、サックスのメンテが必要なことに気づいてしまいました。

サックスがない大が初めて入ったジャズスポットは『TAKE TWO』。
TAKE TWOのアキコさんが生演奏をやっている店を教えてくれて、そこで大はピアニスト・沢辺雪祈に出会います。

ブルージャイアント5巻

ピアニスト・雪祈は大と同い年。「オレと組もうぜ」と声をかけてきました。
翌日雪祈は大を日本有数のジャズクラブ『So Blue』に連れていき、プロの演奏を聴かせます。
雪祈のバイトはデパートの売り場と工事現場。
サックスがメンテから戻ってきたと大から電話があり、雪祈と大はTAKE TWOで待ち合わせます。

そこで大のサックスを聞いた雪祈は、大のこれまでに思いを馳せ、感動の涙を見せました。

玉田の家でバンド結成の決起集会を開く二人を見て、玉田は全力投球できるものがないことがつまらなくなり、大学のサークルを辞めてしまいます。
玉田は大の練習に付き合ったことがきっかけでドラムを始めるのです。
電子ドラムセットを買って家に置き、音楽教室に通う玉田。
雪祈もついに、正式メンバーじゃないけど練習には参加していいと言ってくれました。

ブルージャイアント6巻

雪祈にジャズギタリストの川喜田からバンドへのスカウトの声がかかりますが、雪祈は大の方に可能性を感じたため、断ります。
さらに川喜田とのライブのギャラを、大と玉田に焼き肉を奢って使い切ってしまうのでした。

雪祈が作曲してきた曲は『FIRST NOTE』。
まだ早いという雪祈の声も聞かずに、大はライブをやろうと主張します。

『セブン・スポット』でのライブは2,000枚のチラシを配ってもお客さんは3人。
大と雪祈の演奏はお客さんの度肝を抜いたようですが、玉田は何もできなかった自分に愕然としてしまいます。
それでも自分を鼓舞して立ち直る玉田です。

バンド名を『JASS』と決めた三人のライブには次第にお客さんが集まるようになりました。

ブルージャイアント7巻

JASSのライブに川喜田が飛び入りしてきました。

だんだんファンが増える大と雪祈。
必死で練習し上達している玉田にも、「成長する君のドラムを聴きに来ているんだ」と言ってくれるお客さんが現れます。

初めてのギャラをもらった3人はそれぞれにプレゼントを買いに行きます。
玉田はドラム教室の先生にビールを。
雪祈はアキコさんに花束を。
大は妹の彩香にフルートを贈ります。

雪祈はオリジナル曲の作曲に力を入れ始め、川喜田の家を訪ねてSo Blue の平さんに繋いでくれるよう頼みこみます。

次回のJASSのライブを見に来てくれたSo Blueの平ですが、雪祈はダメ出しをくらってしまいます。
サックスとドラムはいいが君は駄目だと。

平『ブルージャイアント』7巻

平『ブルージャイアント』7巻

ブルージャイアント8巻

雪祈は平に会いに行く前にサインを断ってしまった人を探し続けます。
バイト中に偶然見かけた豆腐屋の車にその人を見かけ、ついに店を訪ね当ててサインを渡します。

雪祈は大にソロで悩んでいることを言い当てられ、TAKE TWOでまる2日間の練習をしますが、壁を破ることはできませんでした。

そんな折、So Blueの平は他のバンドの演奏を聴きに来ていた大と偶然会い、雪祈の様子を訪ねます。
大は雪祈が壁にぶつかり苦しんでいること、でも雪祈はきっと壁を破ること、そして平が何者かを知らない大は、いつかSo Blueで演奏する、と目標を口にするのでした。

JASSのもとにレコード会社の五十貝が現れ、アルバム制作も視野に入ってきました。

ドラムに夢中になった玉田は大学に行かなくなり、留年の説明のために年末は帰省することになりました。

年明け、JASSにはカツシカジャズフェスの出演オファーが舞い込んできました。

ブルージャイアント9巻

カツシカジャズフェスで渾身の演奏を繰り広げたJASS。
雪祈はとうとう壁を破り、玉田はドラムソロを叩き切りました。

JASSを甘く見ていた大トリのバンド、アクトに勝負のつもりで挑んだステージ。
JASSのファンは確実に増え、雪祈は母のピアノ教室に来ていた少女、アオイと再会することができました。

大のもとに三輪さんが訪ねてきて、二人で一日だけの東京観光を楽しみます。
彼氏ができた三輪は、大に別れと激励を告げに来たのです。

そんな中、So Blueの平から雪祈に電話が。
海外からのバンドのピアニストが急病のため急遽出演して欲しいということです。
JASSのメンバーから一人だけ、雪祈が先に夢を叶えることになりました。

ブルージャイアント10巻

子どものころからあこがれてきたSo Blue のステージに立った雪祈。

ソロが回ってきたときには、ピアノを弾いて過ごした長い年月を思い出し、感慨にふけります。

So Blueで演る初めてのソロで、そして
ーーー最後かもしれない

沢辺雪祈『ブルージャイアント』10巻

平の見守る中で、雪祈は謙虚に今の自分と向き合い、持てる力をすべて出し切ることができました。

内臓をひっくり返してやる

沢辺雪祈『ブルージャイアント』10巻

雪祈の演奏を聴いた平は、JASSの出演をできるだけ早く企画することを約束してくれました。

レコード会社の五十貝もCDリリースの準備を着々と進めてくれています。

雪祈はTAKE TWOで、アキコさんが来るのを待って、メンバーに4か月後のSo Blue出演決定を知らせます。

お世話になったアキコさんに最初に知らせるのがスジだからと。
皆に背を向けて水仕事をするアキコさんの目には、大粒の涙が光っていました。

このころ雪祈は自分には作曲の才能があることに気づき始めます。

そしてあさってはSo Blueという夜のこと。
雪祈はバイト先の現場でトラックに轢かれ、右手を複雑に骨折してしまうのです。

病院に駆け付けた大と玉田はそのままTAKE TWOへ直行し、ドラムとサックスだけで演奏できるよう時間を惜しんで練習するのでした。

翌朝、平に連絡を入れ、夢の舞台、So Blueのステージには大と玉田の二人で立つことに。

大と玉田はステージの後、雪祈の病室に見舞いに行きます。
雪祈から「JASSは解散しよう」と提案があり、3人でのステージもCDリリースも叶わぬ夢となってしまいました。

玉田もそれに同意し、大は海外に行くことを決意します。

仙台に戻り由井を訪ねた大は、行先の国について相談します。
由井はヨーロッパのある国の名をあげ、「お前の音は青くなってきている」とブルージャイアント=ジャズの巨星に近づいているということをさりげなく伝えます。

玉田に見送られ、雪祈と電話で話した大は一人、ヨーロッパへと旅立ちます。

大『ブルージャイアント』10巻

大『ブルージャイアント』10巻

スポンサーリンク

漫画『ブルージャイアント』解説

『ブルージャイアント』は1巻から4巻の舞台が仙台で、主人公宮本大が独学でテナー・サックスを吹き始め、半年間の由井による指導を受けて東京へ旅立つまでが描かれます。

ここで楽器屋の小熊さん、バードの川北さん、そして師匠の由井との出会いが、「世界一のジャズプレーヤーになる」という大の決意を実現に向けて導いてくれます。

丁寧に描かれる兄や父、妹とのエピソードも、同級生との触れ合いも、大の素直さ、まっすぐな情熱を描いています。

ジャズへの情熱も、努力も体力も大切な要因ですが、大の性格や礼儀正しく明るくポジティブな人柄が出会う人々を動かし、道を作ってくれていると感じます。

泥臭いほどにストイックな猛練習の様子や、ともすれば見当違いの思い込みをしてしまう姿はスポーツ根性漫画のようでもあり、だからこそ後の成功に説得力を持たせているとも言えます。

初めてのライブで不評を買った時、大は「へでもねえや」と跳ね返します。
自分の大きな夢、情熱、これまでの努力を思い返せば、このくらいでへこたれてはいられないという気持ちの込められたこの一言です。
そして振っきれたような明るい表情は、読者も力づけてくれる、印象的な一コマでしょう。

4巻以降は東京でジャズミュージシャンとして成功していく過程が描かれます。

何一つ伝手もなく、アルバイトで生活費を稼ぎながら、大は日本で一番のジャズの名店に出演できるまでになっていきます。
これは沢辺雪祈、玉田俊二という仲間を探し、彼らと支え合い、切磋琢磨してきたからこそ叶った目標です。

東京編では初心者からドラムを始めた玉田の急成長、俺様キャラの雪祈が音楽的にも人間的にも挫折を味わい、苦悩して成長していく姿が印象的。

JASSを応援しながら練習場所を提供してくれたTAKE TWOのアキコさん、玉田を温かく見守ってくれるお客さん、雪祈の子どものころからの夢だったSo Blue の平さん、実は仙台編でも登場していたレコード会社の五十貝さんといった新しい人間関係もまた、若く情熱にあふれた彼らに力を貸してくれる魅力的な人物たちです。

最後に用意されたバッドエンドは、大を世界に旅立たせるためのものだったのでしょうか。
事故がなければ順調に人気バンドとして売れて行けたかもしれません。

雪祈が自分の作曲の才能に気づくくだりが、伏線になっているようにも感じますね。
ピアニストとして復活するには時間がかかったとしても、やるべきことが見つかったと考えられます。

玉田もJASSの一員だったからこそ、の成功ですので、ここは親に約束した通り大学に戻るのでしょう。この結末を一番残念に感じるのは玉田なのかもしれません。

【関連記事】

『ブルージャイアント』映画館で見るべき8つの理由

『ブルージャイアント』ひどいと言われるのには理由があった!伏線はこれだ!

『ブルージャイアント』映画の高評価の理由は?原作との違いネタバレ!

『ブルージャイアント』あらすじネタバレ解説|映画と合わせて楽しめる

『ブルージャイアント・シュプリーム』あらすじネタバレ!ヨーロッパで大は

ブルージャイアント・エクスプローラーあらすじネタバレ!アメリカで大は?

映画『ブルージャイアント』キャスト!声優・演奏者一覧|世界的ジャズミュージシャンが集結!

『BLUE GIANT』映画化!ブルージャイアントの全曲紹介!

ブルー・ジャイアント×BLUE NOTE コラボアルバム全曲レビュー!

『ブルージャイアントエクスプローラー』ネタバレあり全曲紹介

 

スポンサーリンク

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました