『キングダム』のヒロイン羌瘣(きょうかい)は、鮮烈な登場の後、一時信たちの前から姿を消します。
羌瘣が自らの使命と決めた『仇討ち』とは?
『仇討ち』で羌瘣が掴んだ巫舞の秘密とは?
『仇討ち』の後羌瘣が望んだこととは?
仇討ちを晴らしたことで、さらに強く大きくなっていく羌瘣の秘密の全てを、紐解いていきます。
『キングダム』羌瘣が仇討ちの旅に出るのはここから
羌瘣が信と出会ったのは紀元前245年、羌瘣13歳の年の蛇甘平原の戦いでした。
しかし羌瘣は信と出会う前から、姉のように慕っていた羌象(きょうしょう)の仇討ちを心に誓っていました。蚩尤( しゆう)とは?祭(さい)とは?羌瘣のルーツ
紀元前242年、羌瘣16歳。
魏・山陽平定戦後、飛信隊は帰国の途に就くことになります。
このとき羌瘣は趙での仇討ちを遂げるために、飛信隊に別れを告げます。
仇討ちに行くために従軍していたんだもんな。
飛信隊は寂しくなるけど、頑張れ羌瘣!
前夜、重傷を負った信の枕元で、羌瘣は旅立ちを告げました。
今の私はどういう顔でお前達と別れればいいかわからない。
昔はふつうに泣いたり笑ったりしてたんだが
象姉の首を抱きかかえた時に何かが私の中で壊れた。
仇を討ったら元に戻るといいとは思ってるが…
というわけで行く。悪く思うな。羌瘣『キングダム』23巻p.58
一睡もできないまま旅立ちの朝を迎えた羌瘣。
まだ空に星が残る中一人歩きはじめると、なんと落とし穴が掘られていて羌瘣は穴に落ちてしまうんです!
そこには飛信隊が勢ぞろいしていて、重傷のはずの信が「黙って一人で行こうとした罰だ」と言います。
ドリフターズかい!子どもみたいな飛信隊なんだよね
どんだけ離れようとお前の小っせェ背中俺達がガッチリ支えてるからなってこった
信『キングダム』23巻p.62
羌瘣の目に思わず涙が浮かびますが…照れ隠しに信を落とし穴に突き落とし、旅立つ羌瘣です。
『キングダム』羌瘣の仇討ちの相手は現・蚩尤の幽連
蚩尤の掟では禁じられていたはずの集団戦を謀り、最も強い羌象を倒し、蚩尤となったのは幽族の連でした。
蚩尤となった幽連は、魏国のお抱えとなりましたが、手に余った魏王は幽連を追放しました。
だから羌瘣は最初魏に行ったんだね
その後幽連は趙の王室とつながり、趙・老山の山中に住んでいます。
羌族の明の情報を頼りについに幽連と対面したのは紀元前240年。
祭の時に13歳だった羌瘣はもう18歳。あれから5年も経っていました。
連は22人もの仲間を集めて羌瘣を待ち受けていました。
幽連は羌瘣にあの時の羌象のように舞ってみせろと言います。
羌瘣は彼女たちに、狙いは幽連だけで、他の者に用はないが邪魔をすれば斬ると警告しますが、すかさず幽連は羌瘣を挑発します。
どうせすぐそれどころではなくなる
あの時の羌象のように
あの顔…確かお前拾い上げて見たんだろ?
私に斬り落とされたあいつの苦悶の顔を幽連『キングダム』33巻p.163
羌瘣は巫舞の呼吸を幽連のために残しながら、次々と向かってくる敵を倒していきます。
この時羌瘣は、羌象との会話を思い出していました。
(巫舞の時)だんだん周りのものの動きが遅くなって
最後は飛んでる虫が止まってしまう
そしてその次は真っ青な水の中にいる
それからゆっくりと下へ下へ沈んでいくの
歌を口ずさみながら ゆっくりと 深く 深く羌瘣『キングダム』33巻p.180
そして幽連の姿を捕えた羌瘣は、一気に加速して幽連に向かって行きます!
しかし幽連は、素の状態で羌瘣の一撃を弾き飛ばしてしまうのです。
羌瘣の仇討ちの相手・幽連の強さ!あわや返り討ち?
羌瘣は深い巫舞で一気に勝負を決めようと、最深の巫舞で幽連を攻めます。
ところが、幽連は余裕でかわし、羌瘣の肋骨を折るほどの膝蹴りを入れてきます。
最深の巫舞が通じない?羌瘣ピンチです!
幽連が語る祭の本当の意味
幽連が語る巫舞の奥義は、意識を外から乖離させ内へ向ける、そのために現世のしがらみや情を断ち切ることでした。
幽連は羌象を倒した後、実の妹を手にかけていたのです。
祭という儀式のかたちで、最愛の人間の命を奪うこと…これこそが現世の情をすべて断ち切ることだったのです。
幽連が自ら「怪物に変ずるには十分な理由」と言うように、この時幽連は人格崩壊を起こしたのでしょう。
これによって幽連は助走なしに巫舞と同じ領域まで意識を落とせるように変貌して行きました。
仇討ちの最中に羌瘣がつかんだ巫舞の秘密
羌瘣は容赦なく痛めつけて来る幽連の攻撃に気が遠くなりかけますが、無意識のうちに命を助けてくれたのが緑穂(りょくすい)です。
この宝玉を嵌めた剣は、この後も不思議な力で羌瘣を守っていきますが、それはさらに数年後の話です。
羌瘣はもう、幽連に抗う力はないとあきらめかけますが、意識の暗闇の中で小さな光を見ます。
その光は、飛信隊と信です。
羌瘣は「巫舞の秘密がわかったぞ」と幽連に告げます。
幽連も、武神・龐煖(ほうけん)も「至強」でないのは、それを否定する対極の力が存在するからだと羌瘣は気づいたのです。
それは象姉が羌瘣を倒すために編み出そうとしていた命がけの技です。
精神を深く落とし込む限界を『魄領(はくりょう』といい、限界を超えれば意識が戻れなくなり、これまでにも命を落とす者がいました。
象姉は『魄領(はくりょう』の禁を犯し、死にかけたことがありましたが、その時象姉の魄領の底に届いた小さな光が羌瘣だったのです。
羌瘣は『魄領(はくりょう』の底の闇まで行ったとしても、自分を導いてくれる光があることに気付いたのです。
それが飛信隊であり、信であり、象姉であることに。
必ず戻れることを知った羌瘣は『魄領(はくりょう』の底の闇まで下り、肉体の限界を超えた力とスピードを手に入れついに幽連を倒します。
これでとうとう羌象の仇を討てたのです。
・巫舞によって精神を落とすことで、肉体と感覚は制限から解放され、通常とは違う戦闘ができる。
・その深さは個人によって違うが、特に羌瘣は他人より深かった。
・蚩尤(しゆう)に伝わる方法は、現世との関わりを断ち切り、自分自身の内へと意識を向けることで精神を落とし込むものであり、その究極は『祭』という儀式で最愛のものを●すことであった。
・幽連はこれによって絶大な闇の底に瞬時に到達できるようになったが、その結果は人としての人格の崩壊を伴うものだった。
・一方羌瘣は、現世の自分の居場所や大切な人たちとのつながりが『魄領(はくりょう』の底まで行っても自分に帰り路を示してくれることを知り、巫舞の最深のさらに深い力をも使いこなせるようになった。
・これが、羌瘣と幽連や龐煖との違いである。
次世代の蚩尤を守りたかった羌瘣だが
巫舞の秘密を知った羌瘣は、羌明に幽連の●体だけ隠してほしいと頼みます。
幽連が生きていることになれば、次の祭は行われません。
残酷な儀式から故郷の後輩を守るために、羌瘣は重傷を負い、さらに追手から逃げながらも手を打ちたいと願っていました。
その後でようやく、象姉への気持ちをかみしめる羌瘣です。
ごめん象姉
象姉のことをここに置いていくわけじゃない
傍らにいつも感じながら
私は進むよ
あなたが夢見た外の世界で
あなたの分も
私は精一杯生きるよ 象姉羌瘣『キングダム』34巻p.60
蚩尤として現れた礼を羌瘣が救う
紀元前235年、羌瘣23歳。仇討ちから5年たっている計算になります。
趙との前線で戦っている飛信隊に、羌瘣と同じ羌族の蚩尤・羌礼がやって来ます。
再び行われてしまった祭で、礼は親友の識を手にかけてしまい、幽連同様に蚩尤の力を得ると同時に精神は闇の底で崩壊しかけていました。
勝手に飛信隊に入ると、その並外れた●傷能力を発揮し始めますが、隊律を無視した行動はあまりにも無礼で迷惑なものでした。
礼と隊員の争いを止めようと割って入った羌瘣の身体の異変に礼が気づきます。
禁術「呼び戻しの術」で寿命を失い、羌瘣の体中の気の道がズタズタになってしまっていることを皆の前で言ってしまいます。
三日後、羌瘣は礼と巫舞で戦いながら祭での識の最期を聞き出します。
礼は羌瘣に質問してもらったことで、ついに識の最期の言葉を思い出します。
ずっと礼を手にかけるのはムリだと分かっていた
だから 本当にごめん
でも礼が残れてよかった
勝手ばかり言うけど礼、外で私の分も精一杯強く生きて
大好きだよ 礼羌識『キングダム』62巻p.19
礼は羌瘣に抱きしめられながらとめどなく涙を流します。
私も大好きだよって言わなきゃいけなかったのに
頑張って生きるよって羌礼『キングダム』62巻p.25
礼は心を暗黒に落としながら、羌瘣を倒す、とやって来ましたが、心のどこかで羌瘣に救いを求めていたのでしょう。
羌瘣の方でも、体はボロボロに弱っていても、能力に自信があるだけに、礼に対する思いやりと包容力を見せることができました。
このあと礼は飛信隊の全員に詫びを入れ、羌瘣の治療に力を貸し、飛信隊の戦力になっていきます。
羌瘣が一番口惜しかったのは何だった?
羌瘣の仇討ちについて考察してきましたが、ではこんな思いをしてまで羌瘣が晴らしたかった口惜しさとはいったい何だったのでしょう?
これは、河了貂が言葉で示してくれています。
幽連を●す、そのことだけを思い詰めている羌瘣に、河了貂が訪ねます。
お前の中で一番くやしいと思っているのは何だ?
不確かな掟に翻弄されていたことか?
卑劣な手で象姉が●されてしまったことか?
仇が蚩尤となって生きていることか?
それとも
その人が●された時にその場にいることができなかったことか……オレもそれが一番怖いから
だから戦場に行きたいんだ河了貂『キングダム』9巻p.191
河了貂この時まだ12~13歳ですからね。
やはり天才の頭脳なんですねー。成熟してますね!
象姉の復讐を遂げ、戦いの中でさらに強さを得て、また人間としての大きさを増していく羌瘣には魅力を感じてしまいますね。
飛信隊って凄すぎじゃね?
隊長・信を始め、郭備兵を率いる楚水、麃公軍を率いる岳雷・我呂、桓騎軍から移って来た那貴が加わった飛信隊はオリジナルメンバーに加え、強力な新規採用隊員も加わりついに1万人。
そこへ羌瘣軍5,000が加わるのですが、彼らは羌瘣のためなら命も惜しくない輩ぞろいでしょう!
さらに現役蚩尤の礼まで加わり。
こんなに無敵になってしまってよいのでしょうか。
あと、信のピンチになると出て来る王騎、麃公、輪虎、尾到、万極などもそれぞれ1000人分くらいのカウントをしたいところですよね。
彼らの活躍とどんちゃん騒ぎをいつまでも見ていたいものですね!
『キングダム』羌瘣(きょうかい)仇討ちまとめ
羌瘣の敵討ちの旅を振り返り、巫舞の秘密を知ってしまいましたね。
幽連も、羌礼も祭によって絶大な闇の底に瞬時に到達できるようになりましたが、その結果は人としての人格の崩壊を伴うものでした。
羌瘣によって、祭という方法を取らなくても潜在能力を引き出す方法がわかったのですから、蚩尤族もそろそろ祭の廃止を検討して欲しいものですね!
『キングダム』蚩尤( しゆう)とは?祭(さい)とは?羌瘣のルーツ
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