『ドライブ・マイ・カー』の中のエピソードとして『ヤツメウナギ』が唐突に登場します。
この『ヤツメウナギ』の登場する場面、原作での扱われ方、その意味するものは?という視点から考察していきます。
ヤツメウナギが映画『ドライブ・マイ・カー』に出てくる場面は?
主人公の妻は脚本家です。
妻の執筆スタイルは、夫にベッドの中で物語を語って聞かせ、翌朝夫が妻にその話を語り、妻が脚本化するというもの。
めんどくさい奥さんだな?
まあまあ、これが才能あふれるいい女なんだから、そこはこらえてよ
そんな「語り」の中で、少女が「私の前世はヤツメウナギだった」と思い出すのです。
川の底で、吸盤になった口で石にくっついて、ただゆらゆらと揺れていたこと。
仲間のヤツメウナギたちが他の魚にくっついて栄養を取っている時も、ただ石にくっついて揺れていたこと。
そのために身体はやせ細って、だんだん透明になって……死んだときのことも覚えてはいないけれども、前世がヤツメウナギだった、ということだけを、少女は思い出します。
ヤツメウナギが原作『ドライブ・マイ・カー』に出てくる場面は?
『ドライブ・マイ・カー』は村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収められている短編小説です。
このヤツメウナギのエピソードは、この本の中の短編『シェエラザード』からのものです。
小説の中では語り部である仮名シェエラザードが「私の前世はやつめうなぎだったの」と語り始めるのです。
「やつめうなぎは顎が無くて、口が吸盤みたいになっているの。水底で石に吸い付いて、水草に紛れてゆらゆら揺れていたり、上を通り過ぎていく太った鱒を眺めたりしていた記憶があるの」
『ヤツメウナギ』が意味するものとは?
『ヤツメウナギ』の物語を聞いた後、主人公はPCで『ヤツメウナギ』の画像を検索しています。
そこへやってきた妻が「昨日の話どうだった?」と聞くと、なぜか
「よく覚えていない。途中で眠ってしまったから」というのです。
はっきり覚えていて検索までしているのに、なぜでしょう?
『ヤツメウナギ』の生態
ヤツメウナギの体の両側には7対の鰓孔があり、それが一見眼のようにみえることから、本来の眼とあわせて「八目」と呼ばれる。
アンモシーテス(Ammocoetes)と呼ばれる幼生期には、口は吸盤状でなく漏斗のようで、泥底に潜って水中から有機物を濾しとって食べている。
数年後の変態後は消化管も貧弱で餌を採らない種が多いが、アリナレスナヤツメのように河川内で寄生生活を送るものもいる。
(以上wikipediaより抜粋)
映画の主人公が嘘をついた理由を考察
前世がヤツメウナギの少女は、吸盤になった口で石にくっついて揺れていたわけですから、すでに変態後の状態です。
そして、「何も食べない」という言葉の通り、その後は薄命であることが予想されます。
思うに主人公は『前世がヤツメウナギの少女』と『語り部の妻』とを同一視して、この時にはその運命を知るすべもないながらも、余命短いヤツメウナギを「縁起でもない」と受け取ったのかもしれません。
PCで画像を見たのなら、普通は「こんなヤツなんだ~」と妻に見せるのではないでしょうか?
主人公にとって、ヤツメウナギは餌も食べずに死を待つだけの無力な存在に思えたのかもしれません。
ヤツメウナギ『ドライブ・マイ・カー』に出てくる愛すべきいきもの
ヤツメウナギが映画・小説それぞれの『ドライブ・マイ・カー』に登場する場面を特定し、ヤツメウナギの生態について調べたうえで『ヤツメウナギが意味するもの』を考察しました。
ヤツメウナギは、特に日本に生息する種は、無害で栄養価の高い愛すべき生き物であることがわかりました。
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