何かと比較される『万引き家族』と『パラサイト半地下の家族』ですが、本当に似た作品なのでしょうか。
この記事では家族構成、生計の手段、物語の展開の3点から二つの作品を比較考察していきます。
『万引き家族』と『パラサイト半地下の家族』家族構成を比較
柴田治(リリー・フランキー):日雇い労働者、万引きの常習犯。
柴田信代(安藤サクラ):クリーニング店をクビになる。
柴田亜紀(松岡茉優):初枝の夫の後妻の孫。
柴田祥太(城桧吏):治たちが拾った子。
ゆり、りん、北条じゅり(佐々木みゆ):治と祥太が保護した子。
柴田初枝(樹木希林):年金生活者。
キム・ギテク(ソン・ガンホ):失業中。パク家の運転手になる。
キム・ギウ(チェ・ウシク):ギテクの息子。パク家の娘ダヘの家庭教師。
キム・ギジョン(パク・ソダム):ギテクの娘。短気で口が悪い。公文書偽造。パク家の息子ダソンの絵の教師になる。
チュンスク(チャン・ヘジン):ギテクの妻。パク家の家政婦になる。
パク・ドンイク(イ・ソンギュン):高台の大豪邸に暮らすIT企業の社長。
ヨンギョ(チョ・ヨジョン):パクの妻。美人だが能天気。
パク・ダヘ(チョン・ジソ):パクの娘。
パク・ダソン(チョン・ヒョンジュン):パクの息子。
ムングァン(イ・ジョンウン):パク家の家政婦。
オ・グンセ(パク・ミョンフン):ムングァンの夫。パク一家が入居する前から地下に住んでいる。
ミニョク(パク・ソジュン):ギウの友人。名門大学に通うダヘの元家庭教師。
『万引き家族』は6人、『パラサイト』も6人がパク家に寄生していると考えると、奇しくも同じ人数になります。
『万引き家族』と『パラサイト半地下の家族』生計の手段を比較
祖母もパチンコ屋で他の客の玉を盗んだり、亜紀の養育と守秘の金銭を受け取っています。
亜紀はこづかい稼ぎのアルバイトではありますが、勤務先はいかがわしい店です。
彼らはこれから祖母の年金の不正受給をしたり、りんに万引きをさせたりするところだったのでしょう。
ある夜、家族でキャンプに行ったはずのパク家に全員で上がり込み、勝手に飲み食いを始めたところ、パク家に寄生していたのは自分たちだけではないことを知り、そこからすべてが崩壊していきます。
『万引き家族』と『パラサイト半地下の家族』物語の展開を比較
治と信代は正当防衛とはいえ●人と死体遺棄の前科があり、祥太は拾われた子。亜紀は実の妹の名を風俗店で名乗るなど、それぞれの闇が明らかにされて行きます。
結局、治と信代は親と呼ばれたかったこと。
そして家族ごっこに終止符を打った祥太が最後に治を「お父さん」と呼んだ(と思われる)ところに、この物語の肝である『家族って何だろう』が問われます。
社会の底辺に暮らす主人公たちがお互いに優しさと愛情を持ちより、ある意味では血のつながり以上の絆を作り上げるドラマに心を打たれます。
しかし、元家政婦が何年も夫をパク家に寄生させていたことがわかると、物語は一気にホラーに転じていきます。
最後にギウが壮大な夢のような計画を立てていることを暗示し、一家のたくましさに少し救われた気分で幕となります。
物語の展開の意外性とスピード感に魅せられる作品です。
最期にそれぞれの作品の監督のコメントをご紹介しましょう。
『万引き家族』是枝裕和監督
「祥太のなかに芽生えた倫理観が、家族を内側から壊します。
一方“(本物の)家族”のもとへ戻ったゆり、彼女には首を振るという意思が芽生えています。
(ラストで)彼女が見ている(柵の外の)風景は、映画の冒頭で“隙間から見ているもの”よりも広い。
前向きな終わりというと言い過ぎかもしれませんが、『あの視界の先に私たちがいるかもしれない』ということをオープンにしたつもりです」eiga.comより引用
『パラサイト半地下の家族』ポン・ジュノ監督のコメント
『この映画では、お金持ちも“寄生虫”なんだ』ということ。
つまり、お金持ちというのは、貧しい人々に“寄生”して労働力を吸い上げている。
(自分たちでは)運転もできないし、ハウスキーピングもできないわけです。
お金持ちは、貧しい人たちの労働に“寄生”している――そういう意味合いもあると伝えたら、(マーケティングの担当も)安心していました。
そして、私は考えたんです。(本当は)“寄生”ではなく“共生”になってくれればいいとeiga.comより引用
『万引き家族』と『パラサイト半地下の家族』を比較してみる・まとめ
『万引き家族』と『パラサイト半地下の家族』を比較してみると、主人公たちの生活環境に似通ったものはあっても、表現したい内容にはそれぞれのメッセージがあり、ひとくくりにはできない作品であると思えました。
両者とも世界的に高い評価を受けている作品ですので、機会があればぜひご鑑賞ください。
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