『人間失格』あらすじー3人の女を幸せにした太宰治の愛の形

映画

『人間失格-太宰治と3人の女たち』は、蜷川実花の独特な色彩で太宰治の名作を表現した映画。

題材の暗さにもかかわらず、鮮やかなラブストーリーが展開されていくのが見事です。

小栗旬演じる太宰と彼を取り巻く女たちの情感の世界は耽美的で妖しく、見る人を大正ロマンの世界へと誘います。

そのあらすじをご紹介しましょう!

スポンサーリンク

田部シメ子との自殺未遂

映画の冒頭は、1930年(昭和5年)、津島修治(太宰治・当時21歳)が銀座のカフェの女給・田部シメ子(18歳)との心中に失敗するシーン。

海で波にもまれているうち、二人の手を結んだ紐が解けて修治だけが生き残ってしまいます

実際には服毒自殺に失敗したのですが、太宰は『人間失格』の中で海に入水した、としているので、それを描いています。

溺れる寸前に他の男の名前を呼ぶ女、
水から上がって「死ぬかと思った」と呟く男、なにげにコミカルです。

スポンサーリンク

太田静子は愛人志望の小説家の卵

1947年(昭和22年)1月6日、津島修治(太宰治・当時37歳)が身重の妻・美知子と2人の子どもと暮らす家に、太田静子(当時33歳)が訪ねてきます。

静子は弟の勧めで太宰の本を読み、太宰のファンになって、1941年(昭和16年)から文通していました。
静子は太宰の勧めで日記を書き、太宰はそれをもとに小説を書きたいと思っているのです。

太宰と静子はオペラを見に行き、ここでの会話で静子が太宰の愛人になりたいと言っていることがわかります。

劇場でいちゃつく沢尻エリカが可愛い!
そのまんまの素なのかなって思っちゃいますね

一緒に堕ちよう、静子。死ぬ気で恋…する?

太宰治

二人は劇場から三鷹の太宰行きつけのバーへ。

太宰はママ(壇蜜)に部屋を貸してくれるように頼みます。

映画「人間失格‐太宰治と3人の女たち」より

この部屋がいいよね!あやしくて官能的

静子は「伊豆に来て静子と恋をして。そしたら日記をお見せします」と言います。

「どうすっかなぁ」と悩む太宰でしたが、事情を知らない坂口安吾に「もっと堕ちろよ」と焚きつけられたような形になり、伊豆に向かいます。

 

 

この投稿をInstagramで見る

 

丸山敬太(@keitamaruyama)がシェアした投稿

梅の花満開の伊豆の春。幻想的なほど美しいね!

映画「人間失格-太宰治と3人の女たち」より

日記を手に入れた太宰は静子に真珠のペンダントを贈り、

『病める貝殻にのみ真珠は宿る』傷ついたものだけが美しいものを創り出すんだ」と語ります。

太宰は2月21日から2月24日を静子のもとで過ごし、この時静子は太宰の子を身ごもるのです。

この日記こそ、『斜陽』の元になった貴重なものだったのです。

祭壇の前で、大理石の浴槽で、ベッドで、居間で、延々と繰り広げられるラブシーンはとても美しいの!!

小栗旬・沢尻エリカのキャスティングが最高です。

私、愛されない妻よりずっと恋される愛人でいたい

太田静子

『人間失格-太宰治と3人の女たち』着物はどこの?女たちの素性は?
蜷川実花監督の映画『人間失格-太宰治と3人の女たち』目を奪う美しい色彩の乱舞に恍惚としてしまいますね。 特に興味をそそられたのは着物です。 太宰の妻・美知子(宮沢りえ)と行きつけのバーのマダム(壇蜜)の着物姿が美しかったので、い...
『斜陽』のあらすじを簡潔に『人間失格-太宰治と3人の女たち』より
映画『人間失格-太宰治と3人の女たち』の中に出てくる小説『斜陽』とはどんな内容なのでしょう? 映画をさらに楽しむために、あらすじを簡潔にまとめてみました。 太田静子が主人公で、母と小説家、弟が中心人物です。 主人公が小説家と恋...
スポンサーリンク

山崎富栄は太宰行きつけのバーの近くに住む美容師

1947年(昭和22年)3月太宰と山崎富栄(当時27歳)は出会い、富栄は太宰に惹かれていきます

富栄は三鷹の太宰行きつけのバーの近くに住んでいる美容師です。

大丈夫。君は僕が好きだよ。

太宰治

白い藤棚の下で富栄に長い長い口づけをする太宰。
エモすぎて目が離せません!

家に帰った富栄は、行方不明の夫の写真の前で、罪悪感から泣きじゃくります。

スポンサーリンク

妻・津島美知子には甘えを見せる太宰

その夜遅く、帰宅した太宰。妻子はすでに就寝中です。

妻が作っておいてくれたおにぎりを食べては「うまーい」と大声で繰り返し、かと思えば「なんだこの虫?」と子どものように大騒ぎして、妻を起こしてしまいます。

「『ヴィヨンの妻』評判いいぞ」と自慢してみたり、「(新しい小説が)書けてますか?」と聞かれると「駄目なんだ。怖いんだよ」と弱音を吐いたり。

妻には、人間として弱いところをみせることもできたのですね

スポンサーリンク

静子と富江が鉢合わせ

静子は妊娠を知らせる電報を打ったのに太宰から音沙汰のないことにいら立ち、三鷹の行きつけのバーに姿を現します。

文学青年で姉に太宰を読むよう勧めた弟の通(かおる)も、怒りを隠せぬ様子でその場にいます。

そこへ現れたのが山崎富栄。洋酒の瓶を持って、酌をして回っています。

富栄はお腹の大きい静子に気づき、座敷でいっしょにうどんを食べようと誘います。

静子から「『人間は恋と革命のために生まれてきた。』私が書いた言葉です」と聞かされた富栄。二人の関係を疑うけれど、この時は静子のお腹の子の父親が太宰だとは気づきません。

恋が悪いなら、私は悪くていい。不良でいい。
だってもともと、不良が好きなんだもの。

太田静子

その帰り道、紫陽花の咲き乱れる川辺で、富栄は太宰から「死ぬ気で恋…する?」と言われ、覚悟を決めます。

何人に言っとんじゃ!
破滅するためなら何でもやるの?

覚悟をしなければならない。私は先生を敬愛する。戦闘開始!

山崎富栄

スポンサーリンク

死を見据える富栄

富栄は太宰が結核に蝕まれていることを知り、いずれ二人で迎える死を覚悟して、太宰との恋に溺れていきます。

このときの床の上のラブシーン…富栄の白い下着を脱がせるシーンが印象的ですが、富栄がつぶやく「あたしばっかり幸せでごめんなさい」も考えさせられるセリフ!
人間としては失格でも男性としては誠実な恋人であるという、蜷川ヴァージョンの太宰の真骨頂でしょう

しかし11月には、静子は太宰の娘を出産します。
富栄の部屋に静子の弟・通と編集者の佐倉がやって来て、そのことを知らせます。太宰は娘を認知し、「修治」から一文字を取り『治子』という名を与えます。

富栄は嫉妬で取り乱し死のうとしますが、太宰は「死ぬときは一緒だ」とそれを止めます。

市場で高価な毛ガニを買う富栄。
店の主人が「思い切ったね。来月生きていけないよ」と言うと
「いいの」とにっこり笑う富栄が、少し怖いです

スポンサーリンク

壊れていく人生

作家坂口安吾は太宰に「凄まじい小説」を書いてみろと勧めます。
編集者佐倉も、七年前から懸案の「人間失格」を書いてくれと言います。

祭りの夜、太宰は富栄といるところを長女・園子に見られてしまいます。
いっしょにいた妻美知子は「行きますよ。お父さんはお仕事ですから邪魔しちゃいけません」と去っていきます。

太宰はその夜自宅に戻り、睡眠薬を過剰摂取します。
医者が呼ばれ、肺の病状がかなり悪いと告げられます。そして文壇バーで吐血。

太田静子が『斜陽』の作者に自分の名前も載せてほしいと言ってきたこと。

税務署からの通知で知った途方もない税金の額(当時の金額117,000円)。

太宰は自宅の玄関で泣き崩れます。

スポンサーリンク

『人間失格』執筆へ

太宰は妻の膝で家庭と執筆、というシンプルな生活をしていた時のことを思い出します。
そして、「覚えてる?あのころ」と玄関の板の間で美知子の着物をかき分けていくのです。

露出は少ないけど、むき出しになった太ももと白い足袋が官能的なのよねー

戻らなくていいですよ。あなたはもっとすごいものが書ける。
壊しなさい。私たちを。本当の傑作を書きなさい。
それがあなたのやりたいことでしょう。

津島美知子

仕事場から帰って来た太宰は自宅の玄関で吐血します。

妻美知子は娘に見せまいと、太宰には背中を向けたままです。

太宰が仕方なく外に出ると、白い雪が降り続く夜。
雪の中で大喀血。
血痰が詰まって呼吸できなくなっているのを助けに来たのは富栄でした。

詰まった血を自分の口で吸いだして、太宰の命を助けたのです。

壊す、全部壊す。
書く。人間失格を書く。
書いたら逝こう。 (富栄と)一緒に逝こう。

太宰治

そしてついに『人間失格』の執筆が始まりました。
部屋の中から本が消え、壁が消え、天井も床も消え、何もない空間だけになって…

机の上に『人間失格』の原稿、万年筆、「展望」六月号、津島美和様あての遺書だけが載っています。

エンディング

雨の朝。紫陽花の青が鮮やかな庭先に報道陣らしい人波がつめかけ、家を囲んでいます。
「遺体が上がったぞ」「奥さん話聞かせてください」と傘をさした人々が大声で呼びかけます。

美知子は太宰の書斎で遺書を読んでいます。
読み終わり、立って雨戸を開けると庭には一面の青い花。

美知様

お前を 誰よりも 愛してゐました

津島修二

報道陣の詰めかける中、意にも介さぬ様子で美知子は竿竹を拭きます。
園子の手伝いで洗濯物を干し始めると

「洗濯…ですか?」と聞かれます。

美知子は「ええ。やっと晴れましたから。」と答え、微笑みさえ浮かべながら洗濯物を干し続けるのでした。

一方、太田静子。太宰治との関係を聞かれ

「一生分の恋をしたと思っています。あの方は、私が望んでいたものを全部くれたんです。
この思い出があれば、私一生夢見るように生きていけます」と答えています。

かたわらには『斜陽日記/太田静子』の本の一山。

最期は太宰治と山崎富栄。

「やっぱりよそうか、うん、今日はやめよう」

「死にたいんです。一緒に。ここで、今。」

二人の腕を赤いひもで「絶対に解けない方法」で結んで「行きましょう」とにっこり笑う富栄。

1948年6月13日死去。

まとめ

映画の中では日付は明記されていませんでしたが、事実と見比べるため日付を記入しています。

太宰治の文学のファンにとっては、太宰像が崩れる感じを覚えるかもしれませんが、蜷川ヴァージョンの再構築された世界ととらえ、3人の女性との関係を重視すると意外なハッピーエンドと言えるのではないでしょうか。

妻・美知子は家庭を守り三人の子どもたちの母として生き、遺書には「一番愛していました」と書かれていましたので、ラストでは晴れやかな笑顔を見せていました。このあと美知子は85歳まで長生きします。

愛人・太田静子は一生分の恋人、子ども、自分自身の著書も手に入れています。静子も69歳まで生きています。

愛人・山崎富栄。太宰治と出会ってから亡くなるまで1年4か月半。
一緒に死ぬという究極の希望を叶えています。

太宰治、いや津島修二にとっては5回目でようやく成功した自殺です。

暗い題材をこんなにもハッピー『改造』して見せてくれた蜷川実花監督に拍手を贈りたいと思います。

 

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました