『ゆりかごの星』から探る違和感。『僕』は複製、エリクトは別に居る

アニメ『機動戦士ガンダム　水星の魔女』に姿を現した『エリィ』と呼ばれるリプリチャイルド。

「お母さんはエリクトの生体コードをエアリアルに写した。いまはエリィの体はエアリアル。」

私たちはそう説明されているので、あの子がエリクト・サマヤだ、と考えていますが、本当にそうなのでしょうか？

この記事では『エリィという存在』の謎を解くべく、『ゆりかごの星』を再読してみます。

『ゆりかごの星』の中のエアリアル

『ゆりかごの星』は『水星の魔女』オープニングテーマ YOASOBI「祝福」原作小説という位置づけです。

時系列的にはプロローグの後、エルノラとエリクトが水星へ行ってから、第1話が始まるまでの期間の物語です。

このpvに出てくる青い服の子どもはエリクトでしょうか?

それとも子ども時代のスレッタでしょうか?

エリクト『祝福』pvより

そんなときスレッタは、よく僕の中に入ってくる。
「エアリアル、入れてくれる？」
エアリアル。
僕の名前。
外部には秘密だけど、ガンダムタイプのモビルスーツだ。

『ゆりかごの星』より

僕＝モビルスーツ。
僕＝ルブリスAIとしての人格です。

ゆりかごの星『僕』=エアリアルには感情がある

『ゆりかごの星』のストーリーは、エアリアルのモノローグとして語られます。

そのときどきの出来事、事件。

しかし、そういった『事実』のほかに、エアリアルの『感情』が語られています。

スレッタはいい子だ。

『ゆりかごの星』著：大河内一楼

いい子…

これは学習するAIが下した判断なのでしょうか？
それとも、スレッタの『姉』のようなエリクトの感情なのでしょうか？

「よくやったわね、スレッタ。お母さん、誇らしいわ」
「お母さんが作ったエアリアルのおかげだよ」
「エアリアルもスレッタも、二人ともすごかったわ」
お母さんが笑うと、僕もいい気分になる。僕は期待に応えられたんだ。

『ゆりかごの星』著：大河内一楼

僕もいい気分になる。

これは、綾波レイが「これが、うれしい」と学習したのと同じような、AIの感情なのでしょうか？

それとも、スレッタの『姉』としてエリクトが抱いた感情なのでしょうか？

ダメ。
ダメだよ、お母さん。
僕はいいけど、スレッタはダメだ。あのコは、あんなにいいコなんだから。
復讐なら僕らだけでやろうよ。スレッタを巻き込まないで。

この感覚は非常に人間的と考えられます。

ルブリスAIが学習を続けて、こんな感情を抱くようになったのか？

エアリアルの中のエリクトが感じている気持ちなのか？

ストーリーが進むにつれて、誰の感情なのかがわからなくなってきます。

『ゆりかごの星』の『僕』=リプリチャイルド

この子が『僕』であることは間違いないでしょう。
僕＝エアリアル＝ルブリスＡＩです。

エアリアルがスコア8に達することで、リプリチャイルドはその映像を現し、自由に動いたり話したりできるようになりました。

ガンダムくん

リプリチャイルドはreprint（複写）からくる造語、と説明されているけど、”レプリカ”みたいな意味かな？

エリクトのＤＮＡを使った複製、クローン。

エアリアル

『カヴンの子』の人数は13人。

肉体を持ったのはスレッタ1人、『僕』＝エアリアルが1人、あとはガンビットとして動く11人だよね。

エルノラが最終目標を達成…おそらくスコア10を発動したら、リプリチャイルドたちは肉体を持つのかもしれませんね。

『ゆりかごの星』から探る・エリクトはどこに？13人とは別に居る？

４歳の誕生日にヴァナディース事変に巻き込まれ、水星に逃げ延びたエリクト。

しかし水星の過酷な環境は、17年前…エリクトが８歳の時にその命を奪いました。

「エルノラはエリクトの生体コードをエアリアルに写し取った。
その後はエリクトの体はエアリアルになった」と説明されています。

エリクト『祝福』pvより

では僕＝エリクトなのか。

私は違うと思います。エリクトはこんな子↑でしょ？

『僕』＝エアリアルの意識は独立していて、スレッタが幼い時から感情を持っています。

もし、この「固有の意識」がエリクトなのであれば、エルノラは、なぜこの意識にスレッタの肉体を与えなかったのでしょう？

『僕』の意識は、学習を続けるルブリスAIなのです。

エルノラが救ったのはエリィの生体コード。
エリィの意識、エリィの記憶、エリィの思考は、

• 死亡と共に失われたか
• データストームの海のどこかに眠っているか

のどちらかだと考えます。

プロスペラが「エリィ」と呼びかけ、話している相手は、エリィという人物を学習し尽くしたルブリスAIではないでしょうか。

『ゆりかごの星』から探る・エリィの正体と今後の展開予想

クワイエット・ゼロのパーツを手に入れたプロスペラは、ついにスコア10を発動するでしょう。

そうさせまいと頑張るアスティカシアの学生に、死亡フラグが立たないことを祈るばかりです。

プロスペラの復讐は、全世界を思いのままに操ることで叶うかもしれません。
そして、プロスペラの願い『エリィが帰ってくること』が叶う時。

その時はエリィやリプリチャイルドが今のようなホログラムでなく、肉体を持つのではないでしょうか。

ラスボス・プロスペラの終焉はこんな感じでしょう。