ウェス・アンダーソン2001年の監督作品『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』は、どこかフツウでないけどチャーミングな家族の絆の物語。
ストーリーでほっこり、可愛さ溢れるセンスの映像もイイし、登場人物のファッションにも見どころたくさん。
登場人物、あらすじと見どころを紹介していきます。
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』登場人物
テネンバウム家の家族
ここで登場するテネンバウム家の家族は、父・ロイヤル、母・エセル、長男・チャス、長女・マーゴ、次男・リッチー。そしてチャスの息子アリとウージです。
ロイヤル・テネンバウム(ジーン・ハックマン)
家族と別居して22年ホテル暮らしをしています。
高名な法律家でしたが、資格を剥奪されました。
破産したためホテルを追い出され、「余命6週間」と偽りテネンバウム家に戻って来ようとします。
「愛すべき悪ガキがそのままおじいちゃんになっちゃった」みたいなロイヤルのキャラは、可愛いのひとことです。
妻エセル・テネンバウム(アンジェリカ・ヒューストン)
子どもたち3人を天才に育て上げる教育ママ。
自身は考古学者で、長年の付き合いの会計士に求婚されています。
エセルのモデルは、ウェス・アンダーソンの母親(考古学者)と言われています。
髪を鉛筆でエレガントなアップにしているところと、笑顔がすっごく素敵!
キャリアウーマンらしくキレイ色のスーツを着こなし、エルメスのバーキンが似合うところもイイです。
アンジェリカ・ヒューストン最高!
長男チャス・テネンバウム(ベン・スティラー)
小学生の時からビジネスを始め、6年生でダルメシアンねずみを発明、販売しています。
これがちょいちょい画面に登場するのがとっても可愛い。
不動産、国際投資で莫大な利益を生みますが、父親に騙し取られたと告訴します。
これがもとで、父ロイヤルは資格を剝奪され、破産の道へと落ちていきます。
天才なんだけど、親子三人ずうっとジャージ(笑)そこもほほえましいです。
長女(養女)マーゴ・テネンバウム(グウィネス・パルトロー)
早熟な劇作家。9年生で5万ドルを稼ぎます。
学校を飛び出し多彩な恋愛経験を持つ奔放さがありますが、今は精神学者のラリーと結婚しています。
この映画ではラコステのポロワンピースの上にフェンディの毛皮、靴はローファー、髪にはヘアピンというスタイルが多いのですが、この絶妙な可愛さに釘付けになります!!
次男リッチー・テネンバウム(ルーク・ウィルソン)
17歳でプロテニスプレーヤー、ナショナル大会で3連覇した後、26歳で引退して、船旅に出てしまいました。
子どもの頃は家じゅうの壁に絵を描いていました。
ビヨン・ボルグを彷彿とさせるヘアバンドとフィラのウェアがトレードマークです。
マーゴをずっと愛しています。
テネンバウム家以外の人物
イーライ・キャッシュ(オーウェン・ウィルソン)
お向かいの家に住むリッチーの幼馴染。家のインテリアが素敵。
ヘンリー・シャーマン(ダニー・グローヴァー)
会計士。エセルに求婚し、結婚します。
ラレイ・シンクレア(ビル・マーレイ)
マーゴの夫。精神学者
ダドリー(ステファン・レア・シェパード)
ラレイ・シンクレアの研究対象の少年。健忘症、失語症、色盲ですが鋭敏な聴覚を持っています。
ダスティ(シーモア・カッセル)
ロイヤルの常宿ホテルの従業員。
パゴダ(クマール・パラーナ)
テネンバウム家の召使。ピンクのズボンが可愛い。
ナレーション:アレック・ボールドウィン
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』あらすじ
映画の流れに沿ってあらすじをご紹介します。
チャス・テネンバウムの帰還
長男チャスは息子のアリとウージと3人で暮らしています。
いつも全員アディダスの赤のジャージ姿。
前の年に飛行機事故で妻を亡くしたチャスは、心に傷を負ったままです。
チャスは火事に遭うという被害妄想に囚われ、息子たちと愛犬バックリーを連れてテネンバウム家に帰ってきます。
チャスがベッドの横に寝袋を広げて「パパもここで寝る」っていうと、ウージが二段ベッドの上からいそいそ降りてきて、パパの隣にくっついて寝るのが可愛いんだ!
マーゴ・テネンバウムの帰還
マーゴはもう7年も執筆していません。
鬱々と過ごしていた時、チャスが帰って来たとエセルに聞き、実家に帰る決心をします。
家に帰るとクローゼットにはイーライが。
電話をかけていたので、忍び込んで歓迎してくれたのでしょう。
パンツいっちょだったから、イーライとマーゴはそういう仲だったんだろうな?
これがマーゴのクローゼット。ラコステのポロとローファーがいっぱい、きちんとしまってあるんです。
モード色の高めのグウィネス・パルトローがアイビー・ルックにフェンディの毛皮(笑)
チョット真似してみたいですね?
奥に見えるのは、自作の劇の時に来ていた衣装のよう。一つ一つの場面がいとおしい可愛さに溢れています。
子どもたちの着ている服は「彼らが最も輝いた10~11歳のころの服」という設定があるんだよ!
破産してホテルから追い出されたロイヤルは、エセルの帰宅時に待ち伏せして、余命が6週間と噓をつきます。
エセルは子どもたちに電話してそのことを知らせ、船に乗って海の上で過ごしていた次男リッチーも帰ってきます。
リッチーの帰還
埠頭に迎えに行くマーゴとの再会シーンは、今後の展開を予想させるトキメキでいっぱいです!
この時のマーゴもまた、ブラウンのバーキンをぶら下げています。
家族がなぜかいつも使うのは、小汚い「ジプシー・キャブ」なんだよな。
他のまともなタクシー走ってないのかな?
多分あいつ、マーゴのストーカーだろ(笑)
ヘレン・テネンバウムとレイチェル・テネンバウムのお墓参り
これがロイヤルの母ヘレン。この左右対称な画面もよく出てくるんですよね。
ロイヤルは3人の子どもたちと、2人の孫とお墓参りに行きます。
お墓参りって「家族」を最大に意識する瞬間かもな
前夜にチャスの妻・レイチェルのお墓を「ついでに」お参りしようと失言したロイヤルが、当日は白薔薇の花束を半分、無造作にチャスに渡すシーンがオレは良かったな。
祖母の墓前で解散し、二人で帰るマーゴとリッチー。
マーゴは、リッチーに「イーライに手紙を書いた?」と聞きますが、その手紙には「マーゴを愛している」と書いてあるのです。
あわててイーライに会いに行くリッチー。
イーライ・キャッシュは問題を抱えた売れっ子小説家
リッチーが「なんで話すかな」というとイーライは「オマエこそおかしいぞ、人妻だし姉さんだろ」と返します。
リッチーは「マーゴは養女だから血はつながってない」と言います。
韓流ドラマだと、実は姉弟っていう展開だよな(笑)
でも、マーゴが生まれ故郷を訪ねるシーンがあったから、やっぱり養女なんだよな。
このあと、マーゴのミドルネームのくだりでもう一回考えちゃうけどな?
イーライを演じているオーウェン・ウィルソンが、この作品もウェス・アンダーソンと共同で脚本・制作を行っているんだ。
キャラが濃いはずだよな
ロイヤル・テネンバウムの帰還
いよいよホテルを追い出されるロイヤル。(この時も7色のシャツが可愛いですね)
子どものころからなついていたリッチーに電話して、病室の用意をさせ、とうとうテネンバウム家に帰ってきます。
壁の絵はリッチーが子どものころに描いていたもの。
家族の歴史が刻まれた家って、いいなあと思いますね。
往診の医師はホテル従業員のダスティ(笑)
しかし、病人のふりをしていても、ハンバーガーをパクついているところをヘンリーに見られてしまいます(爆)
ボール・ルームにテントを張って過ごすリッチーに、チャスは「やめとけ」と言いに来ます。
ここんちの子って、みんな大人になりきらない天才児なんだよな!
テントの中はトロフィーやミニカー、地球儀なんか置いてあって、もう泊まりに行きたくなっちゃうよ!
立ち去るチャスにリッチーは「兄貴は苦しんでる。傷つけたくない」「愛してるよ」と言葉をかけます。
家族だからこそ、日常のふとした瞬間の会話を大切にできるんだなあ
ラレイ・シンクレアの疑惑
マーゴの夫・ラレイ(ビル・マーレイ)がテネンバウム家に訪ねてきて、マーゴに戻る予定がないことを聞き、浮気を疑います。
屋上にいたリッチーに「相手は誰だろう?」と相談した時の二人(笑)
悪たれじいちゃんロイヤル・テネンバウム
一方、ロイヤルは孫たちを連れ出してプール、乗馬、カート、信号無視、水風船などのイタズラを教えます!おじいちゃん!
ゴミ収集車の荷台に立ち乗りし、パゴダの与太話を聞かせ、ドッグレースに連れていく…昔リッチーにそうしたように。
孫とはしゃぐおじいちゃんが、バリっとしたスーツを着こなしてるところも、これまた良いのです。
酒もたばこもジャンクフードも楽しむロイヤルが病人のふりをしていることを、ヘンリーは苦々しく感じています。
しかも突然戻ってきて家長然としていることも…ついに二人はケンカします。
テネンバウム家の6日間の終わり
ロイヤルは黒人のヘンリーに「コルトレーン」と呼びかけ、煽ります。
エセルが出てきたため、言い合いはやめますが、ヘンリーはロイヤルの仮病を皆にバラします!!
ウソがばれたロイヤルは家を出ていきます。
「この6日間は人生最高の6日間だった」と言い残して。
ロイヤルに「路上生活に戻ろう」と言われたパゴダは、腹立ちまぎれに折り畳みナイフでロイヤルを刺します。
幸いこれは軽傷ですみ、二人はYMCAの1室で傷の手当てをしています。
YMCAの部屋代を稼ぐため、ロイヤルはホテルのエレベーター係の職を得ます。
マーゴ・テネンバウムの破天荒な過去
さて、ラレイが依頼したマーゴの浮気調査の結果が出ました。
調査員はマーゴの学生時代の素行不良から始まり、19歳・ジャマイカでの結婚、21歳・パリでレスビアンとの恋、24歳・宣伝回り、25歳・パプアニューギニア、26歳・もぐりのタクシー、27歳・市内横断バス、30歳・アーヴィング島、32歳・地下鉄内…マーゴのあらゆる遍歴をあらわにします。
ラレイとともにそれを聞いていたのは、リッチーとダドリー。
ラレイはショックで寝込み、リッチーは自分の長い髪を切り、ひげを剃り、挙句に自殺を図ります。
ダドリーが洗面所で倒れているリッチーに気づき、リッチーは病院に搬送されます。
エレベーターボーイの仕事を放りだし、病院に駆け込むロイヤルとパゴダです。
しかし面会はできず、侵入方法を考えている二人。
その二人の目の前で、病院から抜け出したリッチーはバスに乗って帰宅するのでした。
リッチーがテントに帰ってくると、そこにはマーゴがいました。
リッチーはようやくマーゴに「愛している」と伝え、マーゴも「私もよ」と答えるのです。
キスシーンはずいぶんドキドキしたぜ!
傷ついたリッチーの手にキスをして、「この愛は秘めたままに」と、マーゴは去っていきます。
ロイヤル・テネンバウムはみんなの父親
リッチーは父・ロイヤルの働くホテルにやってきて、エレベーターに乗り込みます。
そして父に、「マーゴを愛している」と悩みを打ち明けます。
ロイヤルはマーゴとアイスクリームパーラーに行きます。
そして、リッチーが苦しんでいることを伝えると、マーゴは
「私のミドルネームはヘレン」
と話すのです。
ロイヤルはそのことを知らなかったので、①偶然である というエピソードなのか、②何らかの近い血縁があるという含みなのか、最後まで分かりませんでした。
父と娘の会話に、この豪華でカワイイ場が似合っているんだな!
あの場にいたほかの5組の客も、すべて父と娘、という凝りようだったらしいぜ
マジか。やっぱりさ、何か意味のある場面なんじゃないのかなあ
その後のロイヤルは、白薔薇をもってチャスの妻のお墓に行きました。
2人の孫は誘いに行きましたが、一緒に来させてもらえませんでした。
そしてロイヤルは、エセルとヘンリーの前に現れ、離婚届を手渡します。公証人も連れて。
エセル・テネンバウムとヘンリー・シャーマンの結婚式
テネンバウム邸ではエセルとヘンリーの結婚式が行われます。
ヘンリーの息子も現れて、父の結婚式に出席します。
そこへ薬物でラリったイーライの運転する車が突っ込み、大破します。
ロイヤルが注意したため、アリとウージは無事でしたが、犬のバックリーは轢かれてしまいました。
怒り狂ったチャスがイーライを投げ込んだ塀の向こうは日本大使館。
玉砂利の上に二人で横たわったまま、イーライはチャスに「俺、治したい」と告白し、チャスは「俺もだ」と言います。
ロイヤルとヘンリーが二人を連れ出しに行きます。
ロイヤルは「私はろくでなしだったし、それが私の流儀だ。でも君に許されないと私は辛い」と言い、ヘンリーは「君はろくでなしじゃない。ただの悪たれだ」と言います。
ひとつひとつ、こじらせていた結び目が解かれていきます。
消防車に乗っていたダルメシアン犬をうまいこと貰い受けて来たロイヤルは、バックリーの代わりに、とチャス親子に犬をプレゼントします。
「ありがとう……辛かったんだ、父さん」チャスはようやくこの言葉を口に出すことができました。
その後のテネンバウム家の人々
エセルとヘンリーは48時間後に結婚。
マーゴの新作は7年ぶりに上演されます。
ラレイはダドリーを連れて新刊の講演に各地を回ります。
ダドリーってずっとラレイと一緒に居るのですが、もしや、ラレイの子どもでしょうか?
イーライはリハビリ病院へ入院。
リッチーは子どもたちに教えるテニス教室を開きます。アリとウージも習いに来ています。
ロイヤルがいつか言ったように、壊れたものもいつか正しく動き出すのです。
ロイヤルは心臓麻痺で68歳で死亡。
最期を看取ったのは長男のチャスでした。
遺言に会ったように、葬儀は夕暮れに。
黒いジャージに身を包んだ孫たちが、合図とともにBB弾を撃ちます。
墓石に刻む言葉は、「ロイヤルは沈む軍艦から家族を救い非業の死を遂げた」。
これ、嘘でもなんでもないんです。
過去の栄光に引き裂かれ苦しんでいた家族を、また一つにまとめて全員を救ったのは、ロイヤル・テネンバウムなのですから。
墓所の門扉を閉じるのはパゴダ。
ロイヤルと苦も楽も共にしてきた盟友の役割でしょう。
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』音楽も印象的!
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』チャーミングな家族と見どころ紹介まとめ
家長のロイヤル・テネンバウムの過ちと身勝手から崩壊を始めたテネンバウム家。
かつて天才とよばれた3兄弟は、それぞれの弱さも持っていました。
破産し、住んでいたホテルから追い出されたロイヤルが戻ったのは、22年前に捨てて来た我が家でした。
すべてを失ってから、家族を取り戻したいと考えたロイヤルの、開き直り?とあきれるほどの素直さは、どこかオカシイ、テネンバウム家の家族たちと周りの人の心に届き始めます。
家族は何年離れていても家族であることが、お墓参り、結婚式といったセレモニーで改めて突き付けられます。
観るほどに愛しい存在になっていく不器用なテネンバウムの人たちです。
ジーン・ハックマンはこの役で2001年「ゴールデン・グローブ賞最優秀主演男優賞」を受賞しています。
同時にこの作品は多くのメディアから「2001年ベストムービー」に選ばれ、アカデミー賞脚本家賞にノミネートされました。
何年たっても色あせない名作、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」を楽しんでください。
ウェス・アンダーソン新作映画『フレンチ・ディスパッチ』の楽しみ方
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