直木賞2022『夜に星を放つ』感想と窪美澄(くぼみすみ)さんプロフィール

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『夜に星を放つ』(文藝春秋社)は2022年直木賞を受賞した作品です。

作者は窪美澄(くぼみすみ)さん。

この記事では窪美澄さんのプロフィールと作品の感想を書き留めていきます。

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『夜に星を放つ』著者窪美澄(くぼみすみ)さんプロフィール

『夜に星を放つ』(文藝春秋社)

ペンネーム 窪美澄(くぼみすみ)
本名 不明
生年月日 1965年
出身地 東京都稲城市
出身校 カリタス女子中学校、カリタス女子高等学校卒業 短大中退
デビュー作 2009年「ミクマリ」第8回R-18文学賞大賞受賞
受賞歴 2011年『ふがいない僕は空を見た』第24回山本周五郎賞受賞
第8回本屋大賞第2位。タナダユキ監督により映像化
2012年『晴天の迷いクジラ』第3回山田風太郎賞受賞
2018年『じっと手を見る』第159回直木賞候補
2019年『トリニティ』第161回直木賞候補、第36回織田作之助賞受賞
2022年『夜に星を放つ』第167回直木賞受賞

窪美澄さんは短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとしてお仕事をされていました。
2009年『ミクマリ』の第8回R-18文学賞大賞受賞で作家デビュー。以後話題作を次々と出版されています。

お子さんは息子さんがお一人です。

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『夜に星を放つ』感想

この短編集には『真夜中のアボカド』『銀紙色のアンタレス』『真珠星スピカ』『湿りの海』『星の随(まにま)に』の5編の短編が収録されています。

5つの作品にはそれぞれ天体という共通項があり、『星つながり』を感じながら、一気に読み切れる作品です。

『真夜中のアボカド』

タイトルに星の名前が入っていませんが、ふたご座にまつわるお話です。

主人公は双子の妹を亡くした32歳会社員の綾。
妹の死をきっかけに婚活アプリで出会った男性と付き合ってみますが…

ここで出て来る『コロナによるリモートワークのため一人で家にこもる閉塞感』や『婚活マッチングアプリ』、そして『コロナの時代にどうやって恋をすればいいんだろう?』という綾の戸惑いに令和の時代を感じます

妹を亡くしたことは「早く結婚して子どもを産みたい」という焦りとなっているのですが、登場する男性たちはキチンとしていて礼儀正しく、控えめすぎ。
触れ合いやぬくもりを求める綾の行動が空回りしていくのが、もどかしいです。

『婚活アプリ』で出会った麻生さんと綾は夏の夜空を見上げてふたご座を探しますが、ふたご座は冬の星座。
麻生さんは「カストルとポルックス」というふたご座の星の名前を教えてくれて、さらに「冬になってふたご座を見つけたら教えてあげる」と言ったことで、綾の期待は高まります。
しかし、麻生さんには秘密が・・・

亡くなった妹の恋人と月命日には会って、大切な存在を喪った悲しみを分かち合って来ましたが、その関係にも終わりが訪れます。

リモートワーク中に水栽培で種から育てたアボカドを植木鉢の土に植えながら、「命を育てる」ことに思い至り、自分と妹を育て上げてくれた母に電話する綾。

母の言葉は折れそうになっていた綾を支え、力づけてくれるものでした。

寄りかかる肩を探した綾が、母の言葉で自分の足で立って生きていく気力を取り戻す結末が爽やかな印象でした。

『銀紙色のアンタレス』

16歳の高校生が海辺の祖母の家で夏を過ごす物語。

ジブリ映画のようなのどかで健康的な、まるで昭和の夏の空気を運んでくるような世界観が心地よいです。

おばあちゃんの家に追いかけて来る幼馴染の女の子、も昭和のマンガのようで微笑ましいですが、たった一つ違うのが「LINEが既読にならない」と怒り出す場面。今時ですね!

真は、子連れの女性・たえに淡い恋心を抱いてしまいます。
タイトルは、たえが銀紙色の星を指さして「あれってアンタレス?」聞くところからきています。

草食系男子とはこういう感覚?それともファンタジー?と興味深く読みました。

『真珠星スピカ』

母の亡霊が父と二人暮らしになった高校生、みちるの前に現れる物語。

母の代わりに家事を始めるみちるの高校生活は、いじめにあい保健室登校という悲惨なものでもありました。

いじめも現代風な題材ですが、その原因がカッコいい男性教師と親しいのをやっかまれて、というところが、陰惨な内容になりすぎるのを防いでいます。

母が生前失くしたパールピアスの片方がタイトルの由来になっています。
ユーミンか。

口数の少ない父親と心を通わせていく様子が丁寧に描かれ、きゅんとしました。

『湿りの海』

主人公の妻は不倫の果てに幼い娘を連れてアリゾナへ去ってしまう。

ワイドショーの定番『不倫』が主人公の穏やかな日常を壊していきます。
家族が分かれるということがどういうことか、淡々とした日常を送ろうとする主人公だからこそ訴えかけてくるものがあります。

そこへ現れるのが、シングルマザーの親子。
娘と同じ年頃の女の子に主人公は懐かしさを覚え、「疑似家族」を夢見るようになっていくのですが…

児童虐待の問題も取り上げ、女たちに去られた男性の孤独を『湿りの海』の絵画が象徴します。

『湿りの海』とは月の表面にある海のこと。天体つながりですね。

『星の随(まにま)に』

両親が離婚し、父と、継母、産まれたばかりの継母の息子と暮らす小学生の想。

中学受験のため、毎晩お弁当を持って遅くまで塾通いをする想と、ワンオペ育児で疲れ切った継母という現代の風景が広がります。

家から閉め出された想を自宅でもてなしてくれるようになったのが、同じマンションのおばあさん。

おばあさんは高齢者施設に入る前に戦時中の風景を絵画にしています。

令和の風景に重なっていく昭和の記憶戦争の悲惨さを忘れてはいけないと改めて訴えているようです。

「本当のお母さんにもっと会いたい」という切実な願いは、『湿りの海』の直後だけに重い余韻を残します。

タイトルは主人公がお父さんの肩車で見る星空から。

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『夜に星を放つ』感想と窪美澄(くぼみすみ)さんプロフィールまとめ

「カストルとポルックス」といえば『ベルばら』を連想する世代の方はいらっしゃるでしょうか。

それと同様に、この作品をきっかけに「アンタレス」「スピカ」が特別な星と感じられるようになったら素敵ですね。

現代的な問題を多く取り上げ、乗り越えていく主人公たちも現代的な人物なのですが、大人の事情が子どもに与える影響が描かれ、身近な問題と照らして考えさせられました。

そして、人を想う気持ちは普遍的なものであることがわかり、人に想われ救われていく主人公たちが成長していく姿が清々しく映りました。

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