加藤巍山(かとう・ぎざん)さんは仏像を彫刻する仏師であり、彫刻家です。
ニューヨーク・クリスティーズのオークションで加藤巍山さんの作品が何と3,285万円で落札されたことで大きな話題になりました。
その3,285万円の作品の画像、加藤巍山さんが仏師を志した理由、また加藤巍山さんの現在についてご紹介していきます。
仏師/彫刻家・加藤巍山さんのクリスティーズ出品作
2020年にニューヨークで開かれたオークション『クリスティーズ』で、日本円に換算し約3,285万円で落札された作品がこちら!
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作品のタイトルは『示現・Ⅰ』です。
『示現』の意味を加藤巍山さんはこのように説明されています。
「誰かが心から欲するもの、本当に必要なものを神仏が具現化してこの世に現すもの、とでもいいましょうか。
たとえば山を歩いていて喉が乾いて死にそうな人の前にせせらぎが現れるように」
『示現Ⅰ』に込められた荘厳な情熱と清涼な気は、見る人を敬虔な気持ちにさせてくれます。
このような作品を創出する加藤巍山(かとうぎざん)さんは、いったいどのような人なのでしょう。
本名:非公開
生年月日:1968年
出身地:東京都墨田区両国
加藤巍山さんが仏師を志した理由
巍山さんは大学卒業後プロのミュージシャンとして仕事をしていたのです!
楽器はギター。ロック・ジャズ・ダンスミュージック・インスト等スタジオミュージシャンとして一通り何でもできてしまう技巧があったため、方向性を見失い、うつ状態になってしまったと言います。
そんななか、フラメンコのギタリスト、パコ・デ・ルシアの演奏を聴きに行き、「今まで自分は何をやっていたんだろう」と衝撃を受けたのだそうです。
パコ・デ・ルシアのフラメンコは民族音楽。
自分の中にあるルーツと情熱を重ね合わせるきっかけを加藤さんに与えてくれたのでしょう。
音楽を辞めた後は、一人で鎌倉をふらふらしたり、自転車で父親の故郷である長崎に行ったりしたそうです。
長崎には2歳のときに亡くなった父親の墓がありました。でも自転車で行くことで何か得られるかと思ったけど、何も得なかった。ただ漕いだだけ。でもそれがよかった
早逝した父を想う気持ちが徐々に巍山さんを仏像に向かわせました。
25才の頃のことです。
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今でも毎月の月命日には浅草の観音様にお詣りをしていらっしゃるようですね。
江戸木彫師と仏師の元で修行
巍山さんはそのころ、浅草の江戸木彫師の作品を見て、感動して「オレには木彫だ!」と直感したといいます。
そこで江戸木彫師のもとに7年間弟子入りし、欄間などの伝統的な江戸木彫の技術を学びました。
その後、巍山さんは工房に出入りする刃物屋さんのつてで、高村光雲の流れを汲む仏師・岩松拾文(いわまつ・じゅうぶん)さんに弟子入りします。
埼玉県春日部の工房に通う日々が六年間続きます。
ここで学んだ技法は星取り技法。
粘土や石膏で実物大の原型を作り、原型に記した無数の星(ポイント)を、星取り機という道具を用いて素材に写し取るもので、それはそれは緻密な作業が続きます。
仏師としての技術を磨きながら、人一倍、制作意欲がある巍山さんは自らの作品を制作し始めます。
平成16年(2004)には「白髪〜斎藤別当実盛」で日展に入選。
平成18年(2006)、浅草、春日部の10数年の修業を経て独立します。
雅号は「加藤巍山」。このとき38歳です。
巍山さんが「自光雲五代(じこううんごだい)」と名乗るのは、「高村光雲より五代目」の意味です。
これは絵師・長谷川等伯が〝雪舟より五代目である〞という意味の『自雪舟五代』と名乗っていたことにならったものです。
巍山さんは制作への想いを次のような言葉で語っています。
「祈らざるを得ない。手を合わせざるを得ないというところへフォーカスしたい。
すべてのひとが感じる清らかな気配を作りたい。
なぜならすべての人は孤独、不安、死と向き合っているのですから。
人間が存在する限り、それは消えないし、物質主義や環境破壊をまったく排除することはもうできません。
でもどこかで歪みや行き詰まりを感じているのも事実です。
その根源のところで想いに輪郭を与えられるようにと彫っています」。
加藤巍山さんの現在
2021年にもニューヨーク・クリスティーズに作品『慈』を出品されています。
加藤巍山さんの作品をいくつかご紹介します。
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大日如来像
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毘沙門天
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薬師如来像
現在は埼玉県白岡市にて創作をされています。
番組では、福島県いわき市の寺院に奉納する阿弥陀如来立像を制作する様子が紹介されました。
また、京都仁和寺の重要文化財・中門は現在改修中。
ここに新しく祀る仏像の制作を依頼されています。
仁和寺からは「500年後、600年後に国の重要文化財に指定されるつもりで」との期待が寄せられています!
奈良・東大寺の南大門には運慶・快慶による国宝・金剛力士像が安置されています。
巍山さんは、これを見上げながら「自分の血がたぎってくる感じ」と言い、「令和の希望となる仁王像を彫りたい」と静かに語ってくれました。
できあがったら、ぜひ京都まで見に行ってみたいですね!
情熱大陸に登場!仏師・彫刻家加藤巍山(かとうぎざん)まとめ
元ミュージシャンだった加藤巍山(かとうぎざん)さん。
彫刻技術と仏像制作の技術をそれぞれの師匠に弟子入りして習得し、現在は自らのルーツと情熱を投影した彫刻作品を創り続けています。
今後の加藤巍山さんの活躍に注目していきたいですね。