『キングダム』760話|信の「人の本質は”火”」は麃公の言葉?8人の死から考察

麃公『キングダム』30巻p.170 ( キングダム

『キングダム』作中で、信は韓非子に問われて「人の本質は”火”だ」と答えています。

単純な武人と思われた信が、韓非子も驚くほどの思想を抱くに至った理由は何だったのでしょうか。

戦場という死と隣り合わせの場所に身を置き、多くの人間の究極の姿を見続けて来た信だからこそ、確信する意味がこの言葉には秘められているでしょう。

韓非子との問答に名前の出た成蟜、桓騎をはじめ、作品中に姿が描かれている人物との『死別の場面』から考察していきます。

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『キングダム』人の本質は”火”|成蟜(せいきょう)の死で信が受け取った”思い”(35巻)

紀元前245年、信が初めて成蟜と会った時、成蟜は親友の漂を死に追いやった憎い相手でした。

しかし時が経ち、紀元前239年に信が成蟜の死に立ち会った時、成蟜は全く違う人間になっていました。

兄・嬴政(えいせい)の宿願である中華統一を応援すると同時に、それは中華全土を流血で覆い、長平の比ではないほどの怨念を被る結果になることを理解していました。
信のことを調べ上げ、今は政の支えとなっていることを知っていたので、信には嬴政の剣であり、同時に盾であることを求めました

妻・瑠衣への愛情と、夫婦の絆を見た信は、成蟜が「相手に何を与えられるか」を考え続けた人になったことを知るのです。

成蟜・瑠衣『キングダム』35巻p.80

成蟜・瑠衣『キングダム』35巻p.80

自分が死んだ後も、兄を助けて欲しいと願う成蟜の思いを、信はガッツリと受け止めたのです。

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『キングダム』人の本質は”火”|桓騎の死で信が受け取った”思い”(69巻)

紀元前233年。桓騎の死に先立ち、信は伝令のオギコから伝言を受け取っていました。
それはオギコと摩論を連れて脱出しろという命令。
それは、「李牧を討つ」という桓騎の思いを未来へとつないでいくことだったのです。

紀元前237年、初めて桓騎に会ったとき、信は『絶対的な拒絶』を体で感じ取っていました(41巻)。
その時は桓騎の残虐と怨恨、憎しみを感じ取っていた信ですが、桓騎を知るにつれ、桓騎の中にある「根っこ」を理解していきます。

紀元前233年宜安~肥下で趙との熾烈な戦いが続きます。

桓騎の「根っこ」とは、虐げられたもの、弱いものを受け入れる器の大きさ。
桓騎の愛した者を虐げ、奪う奴らへの怒り。
さらに奴らの悪行を見て見ぬふりをする世の中への怒りです。

桓騎が地方の野盗から、将軍へ、六大将軍へと昇り詰めていった足跡には、「俺が強い奴らをぎゃふんと言わせてやる」という、意外なほどに純情な気持ちが見えてくるのです。

また、信は桓騎一家の人間たちが心の底から「お頭」を慕い、「お頭についていく」のを見て、やはり桓騎は彼らにとっての光であったことを理解したのでしょう。

「桓騎一家の者を守り・李牧を倒す」という桓騎の伝言を、信はしっかりと受け止めたのです。

桓騎は『中華統一』という目標のマイナス面もしっかり見えていた人間でもあったんだよな。

だから信は、その時政の力になることを桓騎からも約束させられたことになるんだよね。

 

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『キングダム』人の本質は”火”|尾到の死で信が受け取った”思い”(14巻)

紀元前244年。龐煖(ほうけん)に深手を負わされた信を、命がけで救出したのが尾兄弟でした。

尾平・尾到『キングダム』14巻p.134

尾平・尾到『キングダム』14巻p.134

尾到は、夢を信じて突き進む信に、自分の夢を重ねたのでしょう。
自分を含めて、信のために命を張った仲間の思いを言葉にします。

大勢の仲間の思いを乗せて天下の大将軍に駆け上がるんだ

尾到『キングダム』14巻147話

自分の夢を共有してくれた仲間の思いを、信は一日も忘れることはないでしょう。

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『キングダム』人の本質は”火”|王騎の死で信が受け取った”思い”(16巻)

信が初めて王騎に会ったのも紀元前245年、蛇甘平原の戦い。

王騎『キングダム』7巻p.47

王騎『キングダム』7巻p.47

その後王騎の城へ稽古をつけてもらいに押しかけた信ですが、無国籍地帯の平定という課題とともに放り出されてしまいます(10巻)。

一回りたくましくなった信は、続く馬陽の戦いでは王騎直属の『飛信隊』隊長として大活躍します。
しかしその王騎との別れはすぐに訪れてしまいます。

王騎は、深手を負ってもなお兵を叱咤し、龐煖(ほうけん)に立ち向かいます。

将軍とは百将や千人将らと同じく役職・階級の名称にすぎません。
しかしそこにたどり着ける人間はほんの一握り。
数多の死地を越え、数多の功を挙げた者だけが達せる場所です。
結果、将軍が手にするのは千万の人間の命を束ね戦う責任と絶大な栄誉。
故にその存在は重く、
故にまばゆい程に光り輝く。

王騎『キングダム』16巻170話

王騎はその最期に、信に『将軍の見る景色』を見せ、
「皆とともに修羅場をくぐりなさい。素質はありますよ、信」
そう言って自らの矛を与えたのです。

信『キングダム』16巻P.183

『キングダム』16巻P.183

信が託されたものはただの矛ではなかったでしょう。

王騎が信に見せたのは、信が夢見続けた「大将軍の姿」そのものだったのです。

まばゆい光のごとく生き抜いた大将軍の誇りを、生き様を、未来へと背負っていくよう託されたのに違いありません。

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『キングダム』人の本質は”火”|万極の死で信が受け取った”思い”(27巻)

紀元前244年、馬央~馬陽へ攻め入り、民衆を皆●しにした万極は『長平の戦い』の遺児でした。

その万極と信が戦うのは、紀元前242年合従軍の戦いです。
万極は怨念と呪いの力で信を縛ろうとしますが、信はその暗闇の中で、嬴政(えいせい)の唱える『中華統一』こそが怨嗟の渦を断ち斬る光であると気づくのです。

万極『キングダム』27巻p.32

万極

分かってんのか万極、一番呪われちまったのはお前自身なんだぞ。
てめェの痛みはしょってってやる。
だからお前はもう楽になりやがれ!

…俺は長平みてェなことは絶対にやらねェし!
絶対やらせねェ!

信『キングダム』27巻288話

信が受け取った”炎”は希望や願いだけではありません。
時には万極のような怨念も、『二度と繰り返さない』ため、信は背負っていくことを決意するのです。

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『キングダム』人の本質は”火”|麃公の死で信が受け取った”思い”(30巻)

麃公と信が初めて会ったのは紀元前245年、蛇甘平原の戦いでした。
この時麃公将軍は、敵将呉慶を”炎”にたとえ、戦意も”炎”と表現しています(7巻)。

そして紀元前241年、函谷関から咸陽へ向かう李牧軍に追いつき、李牧を、戦を”炎”と呼びます
龐煖(ほうけん)を前にした麃公は信にこう言います。

童(わっぱ)信。前進じゃァ!
ここは貴様の火を燃やし尽くす場所に非ず。咸陽へ行け!

麃公『キングダム』30巻第325話

そう言って、盾を信へと投げ渡します。

麃公の最後の言葉は「火を絶やすでないぞォ」

麃公『キングダム』30巻p.170 (

麃公『キングダム』30巻p.170

最後の瞬間まで灼熱の炎を燃えたぎらせて、散って行く麃公でした。

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『キングダム』人の本質は”火”|松左の死で信が受け取った”思い”(55巻)

紀元前244年飛信隊発足以来の古参兵、松左。

松左『キングダム』17巻p.15

松左『キングダム』17巻p.15

三百人隊となった『飛信隊』で、大きな手柄を上げて出世を、と焦る信。
信に「肩の力を抜いてちゃんと今を皆と楽しめ」と教えたのが松左でした。

紀元前236年。朱海平原で飛信隊副歩兵長・松左は命を落とします。

趙軍は強く数も多く、飛信隊はいつの間にか囲まれていました。
松左は、新人の多い部署を助けに自ら飛び込んでいったのです。

新人を助けるために負傷した松左ですが、諦めそうになる彼らを鼓舞して戦い抜き、ついに脱出に成功します。

しかし自らはすでに力尽きていました。

「信の近くに運んでくれないか。
わがままで悪いが、最後はできるだけあいつの近くに…

頑張れ 信」

松左『キングダム』55巻593話

最後の瞬間、最前線から駆け付けた信の腕の中で息絶えた松左。

松左『キングダム』55巻p.84

松左『キングダム』55巻p.84

『ありがとな』この言葉は松左から信へ。そして信から松左へ。
お互いに伝えあったものなのでしょう。

松左は信の「大将軍になる」と言う夢を自分の夢に掲げ、飛信隊の新兵たちを一人でも多く救うために自ら覚悟して死地に足を踏み入れていきました。

松左は信の夢を叶えるために、自分の命を最後に燃やし尽くして見せたのです。

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『キングダム』人の本質は”火”|那貴の死で信が受け取った”思い”(59巻)

那貴は桓騎軍の幹部でありながら、信とは深いつながりがあります。
紀元前237年、黒羊の戦いで那貴は『隊員交換』で尾平の代わりに飛信隊にやって来ます。

那貴の方でも飛信隊を気に入り、ついに桓騎軍を抜けて飛信隊に入ってきたほど。
しかし紀元前233年の趙との戦い、肥下の戦いでいざ桓騎の身に危険が迫ると、那貴は桓騎の元へ戻ると信に告げます。

「結局あのクソヤロー桓騎は、俺達にとってしびれるくらい最高にカッコイイ男なんだよ」

そして、那貴は信にも「俺を惚れさせた男なのだから最高の天下の大将軍になれ」と言うのです。

那貴は一家の者には「信とともに行け」と言いますが、手下の者たちは「俺達は那貴さんに惚れてるんで」と那貴と運命を共にすることを選ぶのです。

那貴は桓騎を知りたいと、わかりたいと、近づきたいと願いながら散っていきます。
雷土のように。黒桜のように。

そんな桓騎一家は信の目にはどう映ったでしょうか。

鮮やかな花火のように散っていったキャラ濃すぎの桓騎一家の悲しみも、怒りも、なくなるような新しい世界があるのなら。

そんな世界をまさに創ろうとしている男が政であるなら。

彼らの思いを丸ごと背負って、自分のすべてを捧げようと考えたかもしれません。

『キングダム』人の本質は”火”まとめ

『キングダム』の信が背負う仲間の、将軍の、敵の思い。

戦場で信は彼らの思いを受け止めながら、「思いを繋いでいく」と考えるようになったでしょう。

「人の本質は光」という嬴政(えいせい)の思想を知りつつ、その光を絶やさぬよう灯し続けていくというイメージは、麃公将軍に「火を絶やすでないぞ」と言われた時から持ち続けていたのかもしれません。

 

 

 

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