映画『燃えよ剣』の原作は司馬遼太郎作『燃えよ剣』です。
映画では時間の関係で割愛されている部分も含めて、原作小説のあらすじをご紹介します。
それぞれのエピソードの関連がわかり、映画をさらに楽しめますよ!
小説『燃えよ剣』あらすじ
『燃えよ剣』の主人公は新選組副長、土方歳三です。
草深い多摩の薬売りの時代から、京都でその名をとどろかせ、時代に流されることなく自らの信念を貫く姿が描かれます。
主人公とその仲間たち
主人公は「石田村のバラガキ」と呼ばれた土方歳三。
バラガキ(茨垣)とは、乱暴者のことです。
中心人物は土方歳三、近藤勇、沖田総司、永倉新八、井上源三郎、藤堂平助、原田左之助、山南敬助、斎藤一。
近藤の剣道場・柳町(現:新宿区市谷柳町)試衛館で出会った男たちです。
はじまり
歳三は府中の祭りの夜、佐絵という女に出会いました。
歳三は神官の娘である佐絵の屋敷に通うようになります。
ある夜、見廻りをしていた剣の達人・六車宗伯を、歳三が斬ってしまうところから物語は始まります。
試衛館の一行が京都に行く理由
「六車宗伯の仇討ち」と歳三たちをつけ狙う七里研之助は、歳三たちとの勝負に敗れ京都に行きます。
歳三は、七里が「これからの武士は京だ」と触れ回っていたと耳にしました。
そのことは歳三たちの記憶に残ったことでしょう。
その翌年・文久二年(1862年)、江戸では麻疹(はしか)とコレラが大流行しました。
道場に通う門人の足音が絶え、食客を何人も抱える試衛館は経営危機に陥ってしまいます。
彼らは幕府が将軍警護のために徴募している「浪士組」に揃って加盟します。
「浪人である自分たちが将軍様をお護りする」
「手柄を上げたら旗本に取り立てられる」
近藤勇の感激は、現代人には計り知れないほどの大きさだったでしょう。
歳三は「武士になる」ため、名刀「和泉守兼定」を手に入れ、京へ向かいます。
新選組の誕生
1863年、京に上った浪士組は、清川八郎の目的が尊王攘夷であったことを知らされます。
近藤勇と芹沢鴨の一派は浪士組から別れて会津藩預かりとなり、ここに新選組が誕生します。
組織を作り上げると、芹沢一派を粛正。
近藤勇を局長に据えて、「鬼の副長」土方歳三は「武士よりも武士らしく」生きるために、「規律に背くものは切腹」という鉄の掟で組織を作り上げていきます。
政治の世界に傾倒していく近藤勇とは違い、土方歳三は生まれついての「天才喧嘩師」なのです。
一、士道に背くまじきこと。
一、局を脱することを許さず。
一、勝手に金策すべからず
一、勝手に訴訟取り扱うべからず
一、私の闘争を許さず
右条々相背き候者は切腹申しつくベく候也。
池田屋事件
1864年、長州藩の不穏な動きが伝わってきます。
道具屋・枡屋喜右衛門は長州系志士・古高俊太郎の仮の姿であり、その道具蔵に武器弾薬を準備しているというのです。
新選組はまず古高を捕縛します。
すると長州側に動きがあり、監察の山﨑烝が「池田屋で会合がある」という情報を掴んできます。
町奉行所の密偵からは「木屋町の丹虎」という情報が入っています。
近藤勇は隊を二手に分け、自ら沖田総司、東堂平助、原田左之助、永倉新八、養子・近藤周平らわずか6,7名を率いて池田屋に斬りこみます。
丹虎へ向かった一行もほどなく合流し、激戦の末20名以上の志士を斬殺または捕縛しました。
ようやく幕府軍3,000人があたりを囲んだ頃には、歳三の仕切りですべての功績は新選組のものとなりました。
長州側の計画は『風のある夜、京の各所に放火し、御所に乱入して天子を奪って長州に動座。さらに京都守護職・松平容保を襲撃』というものであったことがわかりました。
そして、この夜を境に新選組は一気にその名を上げていくのです。
池田屋討ち入りの際には有名なそろいの羽織を着用していたと言われています。
※映画では、芹沢鴨が提案した浅黄のだんだらを「私は聞いていない」と土方が退けるシーンがあり、黒の隊服が採用されています。黒の方がイメージに合っていますね。
お雪との出会い
ある夜、因縁の仇敵・七里研之助が仲間を連れて襲ってきます。
なんとか脱出し、逃げ込んだ家の主がお雪です。
傷の手当てをするために内井戸を借りると、着替えの着物を用意してくれる、気の付く女。
お雪は京での護衛を命じられた夫について江戸からやって来ましたが、夫は病死。
お雪は今、絵師になる勉強のため、京で一人住まいをしています。
二条中洲の決闘
ある夜、お雪に会った帰り、またしても出会った七里研之助と、二条中洲で決闘をすることに。
しかし、七里はやはり手下の援軍を呼んでいました。
なんとか七里を斬り、手下と戦っているところへ沖田総司が助けに来ます。
ようやく生き延びた歳三は、裏で糸を引いているのが新選組の参謀・伊東甲子太郎であることを知るのでした。
土方歳三は近藤にこう言います。
「歴史というものは変転していく。その中で万世に易(かわ)らざる者は、その時代その時代に節義を守った男の名だ。」
新選組に加入後、幕府に見切りをつけ薩摩藩の御陵衛士へと転身した伊東甲子太郎を討ち、その仲間たちも粛清します。
歳三はふと(剣に生きる者は、ついに剣で死ぬ)と思うのでした。
幕末の激動の中で、新選組を取り巻く状況が変わってきています。
鳥羽伏見の戦い
1867年、将軍徳川慶喜は薩長による武力倒幕を避けて、大政奉還を行いました。
1868年、旧幕府軍と薩摩・長州の軍がぶつかり、これに新選組も加わっています。
戦に敗れ、大将の近藤勇は負傷、沖田も結核のためすっかり寝込んでしまっています。
甲陽鎮撫隊
江戸に戻った近藤勇率いる元新選組は「甲陽鎮撫隊」として徳川家から大砲・銃の支給を受けます。
甲府城で官軍と戦いますが、時代は射撃戦へとかわっています。
士気の上がらない「甲陽鎮撫隊」は敗走し、江戸へ戻ります。
そこでついに新選組は解散。
近藤と土方は改めて人数を集めて流山へ向かいます。
近藤勇との別れ~宇都宮~函館へ
1868年4月3日、近藤勇は歳三の引き留めも聞かず、官軍に投降してしまいます。(この後、板橋に移送され、4月25には斬首刑が行われてしまいます)
残された歳三は、大鳥圭介という幕臣と出会います。
旧幕府への信義を貫き、官軍の占拠する宇都宮城にわずかな人数で斬りこみます。
「新選組、進めっ」と叫ぶ土方歳三は、「幕府を守る」と決心したあの時のままなのです。
残った仲間たちを生き延びさせるため最後まで気遣いながら、自らは五稜郭の戦いで「新選組副長土方歳三」と名乗って散っていくのです。
最後まで喧嘩師だったんだな!
この小説の中に流れるもう一つの物語は、お雪とのロマンス。
お雪にだけは心を開き、いつしか愛するようになった歳三は、ふたりの間に流れる穏やかな時間の中で、戦場とは別の顔を見せてくれます。
お雪という架空の人物を登場させることで、歳三の持つ繊細な感性と男としての優しさを私たちに見せてくれているのかもしれません。
疫病の流行によって、自らの退路を断って京へ上る歳三たち。
改めて彼らをめぐる状況を考えてみると、「必然であった」と深く納得してしまいます。
何一つ後ろ盾のない彼らは、引くことなどできない。
だからこそ、自らの信じる義のために前へ前へと進むことしかできなかったのでしょう。
映画『燃えよ剣』を見る前に読むべきもう一冊は?
映画『燃えよ剣』を見る前に読むべきもう一冊は「新選組血風録」(司馬遼太郎 中央公論社)です。
「燃えよ剣」と同時期、1962年から「小説中央公論」に連載され、1964年に出版されました。
沖田総司、山崎烝、斎藤一、ほか架空の隊士も含めて、一人一人を主人公にした短編集です。
有名な「池田屋事件」や近藤勇の刀「虎徹」などのエピソードも、どこかユーモラスに語られ、気づけば新選組の大ファンになってしまいます。
「前髪の惚二郎」などの創作ものの中にも新選組の隊の空気が感じられる場面があります。
映画をさらに楽しむために読んでおきたい一冊です。
小説『燃えよ剣』のあらすじ【ネタバレあり】映画もきっと観たくなるまとめ
小説『燃えよ剣』は1962年から週刊文春に連載され、1964年出版と同時に大ベストセラーになりました。TVドラマ化3回、映画化は今回が2回目です。
50年以上愛され続けている「燃えよ剣」。
登場人物に関しては司馬遼太郎氏の創作した部分もあるようなのですが、もはや現在認知されている「新選組のキャラクター」の土台として定着している感が大きいですね。
これらを読んでから、改めてアニメキャラ等に触れると、いっそう親しみが湧いてきます。
ぜひ愛読書に加えてみてください。
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