『漁港の肉子ちゃん』名言・名セリフと感想

漁港の肉子ちゃん

明石家さんまさんは、西加奈子さんの小説『漁港の肉子ちゃん』に出会ったとき「すごく良い感動的な作品なので、映像として残したい」と感じたそうです。

ストーリーももちろんですが、個性的な登場人物の「名言」にも注目です!

私たちに元気をくれる、「名セリフ」を集めてみました。

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「子供には、罪はないからな!」

この小説の主人公のお母さん、肉子ちゃん(38歳)は男運が悪いのです。
これまでだって、何度も騙されているのです。
でも、またこの時も、妻子ある男性に騙されお金を巻き上げられ、逆上して男の家へ。
でも、男の家の前で、子供用の自転車を見ただけであっさり帰ってしまう。

「子供には、罪はないからな!」
肉子ちゃんは、優しいのである。でも、
「目が非って書いて、罪って読むのやから!」
それは何だ。

『漁港の肉子ちゃん』(西加奈子)P.10より

漢字を分解する癖のある肉子ちゃん。本名は菊子といいます。
それを冷静に分析しているのが、娘の喜久子、11歳なのです。

お人良しなのか、人とは感覚がズレているのか?

普通なら相手の男も、男の家族も恨めしく思うところを、あっさり許してしまえるのが肉子ちゃんらしいところです。

悪い男に騙されてもすべてを恨まないのです。

何年もかけて男の借金を返し続ける肉子ちゃん。
どんなところからでも幸せをつかみ取るたくましい肉子ちゃんなのです。

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いびきの音は「すごーい、すごーい」

太った肉子ちゃんはいびきがすごい。
でも、そのいびきの音は、喜久子には「すごーい…すごーい…」と聞こえるのです。

うるさいはずのいびきの音も、ユーモラスに受けとめられるのは愛情ゆえでしょうか?

肉子ちゃんのいびきを聞いた人は、いつしかそのいびきを愛しく思えてくるのです。

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「あいつって、事故みてなもんらよな。」

肉子ちゃんの周りの人はこういいます。

「ど-いえばいいろか、あいつって、事故みてなもんらよな。」

『漁港の肉子ちゃん』(西加奈子)P.45より

人との距離感を全く考えない肉子ちゃんですが、この漁村の優しい人たちはこう言って肉子ちゃん母娘を受け入れてくれるのです。

肉子ちゃんと「事故みてえに」出会う人々は、いつしか肉子ちゃんと笑いあい、心を開いて語り合う楽しさに気づいていくのです。

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「普通が一番ええのんやでっ!」

「キクりん、今日はどないな日やったん?」

「んー、普通。」

「普通かっ!普通が一番ええのんやでっ!」

『漁港の肉子ちゃん』(西加奈子)P.99より

自分は普通でないのにそんなことをいう肉子ちゃんに、娘の喜久子(キクりん)はため息をつく思いです。

誰の言うことでも、テレビで聞きかじったことでも、疑うことを知らずに信じ込んでしまう肉子ちゃん。

でも、この物語を最後まで読めば、改めて肉子ちゃんのこの言葉の重さに気づくのです。

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「明日から一緒にバスケやろう」

ちょっと変わった男の子、二宮には、自分の思っていることを何でも話せる喜久子。
クラスの中で起こっている女子同志のトラブルを何気なく話し始めるうちに、喜久子は隠された自分の本心に気づきます。

私が、マリアちゃんを疎ましく思っていた。
マリアちゃんの大きな家が、屈託のない自信が、綺麗な浴衣が、私は羨ましかったのだ。
明日から一緒にバスケやろう、と言うと、マリアちゃんは、うん、と言った。

『漁港の肉子ちゃん』(西加奈子)P.216より

何気なく言葉にしてみて初めて気づく自分の心があります。
自分でも意識していなかった、自分の想い。
それに気づいたとき、自分からマリアちゃんの家に仲直りに行ける喜久子は素敵です。

自分の心の中の想いに気づいたとき、行動を起こせる自分でありたいものですね。

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「生きてる限りはな、迷惑かけるんがん、びびってちゃだめら。」

肉子ちゃんの仕事先、焼き肉屋のサッサンに迷惑をかけるまいと腹痛の我慢を重ねた喜久子。

盲腸の手術を受け、入院した病院にサッサンが来てくれました。

「子供のうちに、いーっぺ恥かいて、迷惑かけて、起こられたり、いちいち傷ついたりして、そんでまた生きてくんらて。」

『漁港の肉子ちゃん』(西加奈子)P.291より

白い髭、深い皺のサッサンは、生きてる限りその繰り返しと教えてくれます。
家族と思って頼っていいのだと。

喜久子が「望まれて生まれたんじゃない」と思い込んできたことも、涙で洗い流すと、喜久子の出生の秘密が語られていきます。

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「うちは、肉子ちゃんのことが大好き。」

喜久子は、肉子ちゃんの大きな大きな愛情に包まれて生きてきた事を知ります。

喜久子の名前は、肉子ちゃんの名前「菊子」の漢字を変えたもの。

「喜びに久しい子と書いて、喜久子とよむのやからっ!」

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まとめ

「寂しい」と言葉にした時、「寂しかった」と知った時に、目の前に肉子ちゃんがいるだけで、安心できる。

そんなシーンが2回繰り返されますが、肉子ちゃんがそこにいたから初めて、「寂しかった」と認めることが出来たのかもしれません。

喜久子には、生き物や幽霊、家具などの不思議な声が聞こえます。

でもこの物語の最後では、いつも港にいる3人の老人の姿はありません。

喜久子には大好きな肉子ちゃんがいて、少しだけ大人になったからでしょうか。

爽やかで、どこからか力が漲るような気持ちにさせてくれる読後感です。

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